自分の息が臭いような気がすると感じた時は歯周病のサインかもしれません。歯周病になると「玉ねぎが腐ったような臭い」が発生します。
歯周病は虫歯と並んで日本人が歯を失う2大原因のひとつですが、初期段階では気づきやすい自覚症状がないため、歯科検診を 受診し歯科医師から指摘されて驚く人も多いでしょう。
歯周病は小さなサインを見逃さず早期に適切な対処をすることが大切です。
歯周病のサインとなる臭いの原因・臭いの対策・セルフチェックの方法をご紹介しますので、歯周病予防や歯周病対策に活用してください。
歯周病の臭いは自分でわかる?
お口の臭いに注意していると歯周病を疑うべき臭いは自分でもわかります。
無言の時間が長かった後に息をすると口臭がしたり、マスクを外すとマスクから嫌な臭いがしたりした時は歯周病を疑いましょう。
歯周病の口臭は一般的に「玉ねぎが腐ったような臭い」といわれていますが、腐った玉ねぎの臭いを嗅いだことがない人もいるでしょう。自分の息が何か臭いと感じたなら歯周病を疑ってください。
また自分では気づかなくても、家族や友人から口臭を指摘された時は歯周病かもしれないと疑って損はありません。
早期に歯周病を発見できれば口臭を防ぐ対策が取れますし、失ってしまうと2度と生えてこない永久歯を失うリスクも軽減されます。
歯周病の時の口の臭いの特徴
口臭を人から指摘されるのは恥ずかしいかもしれませんが、口臭に気づかずにいるのはさらに恥ずかしいのではないでしょうか。しかも歯周病が進行すると次第に口臭が強くなります。
口臭は歯周病の原因であるプラークから発生する気体によるものです。
プラークとは口の中の食べ物のカスに様々な細菌が繁殖・増殖した白いネバネバしたもので、歯や舌の表面だけではなく歯と歯茎の間にもたまり歯周ポケットと呼ばれる細菌の温床になります。
様々な細菌が繁殖しているのですから臭いがして当然ですが、特に目立つと考えられているのが硫化水素の臭いとメチルカプタンの臭いです。
この硫化水素とメチルカプタンの臭いが混ざり「腐った玉ねぎの臭い」を連想させる臭いになるのでしょう。
硫化水素は腐った卵のような臭いがする気体で、悪臭防止法に則り政令で定める特定悪臭物質の3番目に挙げられるほど人間にとって不快な臭いです。
腐った卵という表現がピンとこない人でも温泉の臭い・硫黄の臭いといえばわかるのではないでしょうか。
プラークから発生した硫化水素は無色の気体であるため見た目ではわかりません。しかし、口の中に充満した温泉街に漂う硫黄のような臭いの原因は硫化水素です。
メチルメルカプタン(メチルカプタン)はメタンチオールとも呼ばれる気体で、悪臭防止法に則り政令で定める特定悪臭物質の2番目に挙げられる悪臭です。
メチルメルカプタンは揮発性硫黄化合物の一種で、腐った玉ねぎのような腐敗臭や排泄物のような不快な臭いがします。
誰でも自分の口から排泄物のような臭いや硫黄の臭いがするなどとは考えたくはありません。
しかし、口臭の原因の大部分を占めているのが硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドといった揮発性硫黄化合物の臭いです。
歯周病で臭いが発生する理由
ここまでは歯周病になると発生する口臭がどのような臭いなのかを説明してきました。臭いの表現があまりにもひどいと不快に思われる人もいるでしょう。
しかし歯周病に対する正確な知識を持つことは歯周病への的確な対処への近道です。
的確な対処で歯周病を予防したり早期発見したりできれば口臭に対する悩みは軽減されますし、悩まずに済む可能性もあります。
どれほど口臭に悩んでいても何も対処しなければ状況は改善しません。歯周病による臭いへの的確な対処への第一歩は歯周病の臭いの原因を知ることです。
歯周病の臭いの大きな原因は「歯茎にたまった膿」と「プラーク」であると考えられていますので以降の章で詳しく説明します。
歯茎に膿がたまっていると聞くと驚くかもしれませんが、歯周病が進行すると歯茎に膿がたまってしまいます。
膿から発生する腐敗臭は口臭の大きな原因の1つです。
例えば手や足にけがをした時、消毒しないと雑菌が入って炎症を起こして化膿してしまうことがありますが歯茎も同じように化膿します。
歯周病では歯周ポケットに多くの細菌が繁殖しています。その状態で歯茎の炎症が長く続くことにより化膿し、徐々に膿がたまります。
歯周病の場合は歯周ポケットに多くの細菌が繁殖した状態で炎症が長引くことにより歯茎が化膿してしまうのです。
また歯周病で歯茎に膿がたまるのは歯周病がかなり進行した状態です。自覚がある場合は早急に治療を始める必要があります。
プラークとは食べ物の残りカスが歯に付着し細菌が繁殖したものです。プラークは水に溶けないため食後に口をすすいでも取れません。
歯ブラシで丁寧にこすり落とさなければ取れないのですが、注意して歯磨きをしてもどうしても磨き残しが出てしまいがちです。
こうした磨き残しのプラークの細菌が次第に歯と歯茎の間にたまり歯周ポケットを形成します。歯周ポケットは細菌の増殖場といってもいいでしょう。
歯周ポケットのプラークに含まれる細菌は増殖しながら食べ物の残りカスのアミノ酸を分解し、硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドといった揮発性硫黄化合物を生成します。
これらの揮発性硫黄化合物が口の中で悪臭を放つことが歯周病の口臭の大きな原因の1つです。
歯周病の臭いをセルフチェックする方法
歯周病は初期段階での自覚症状がほとんどなく早期発見がむずかしい病気です。病状が進むと永久歯を失うリスクが大きくなり健康寿命にも影響を及ぼします。
昨日は自分の息が臭いような気がしたけれど、今日は大丈夫だからといっても安心はできません。
臭いの強さは口の中の状態や体調によっても変化するため、息が臭いと感じたなら念のために歯周病の可能性を考えセルフチェックしてみることが大切です。
「腐った玉ねぎ」や「腐った卵」のような口臭は歯周病が発する小さなサインです。見逃さないよう定期的なセルフチェックを心がけましょう。
セルフチェックの方法はいくつかありますが、ここでは実行しやすい3つの方法を紹介します。
人間の唾液は正常な状態では臭いもしなければ味もしません。唾液には口の中の粘膜の保護・口の中の浄化などの役割があり、口の中を清潔に保つためには欠かせない液体です。
その唾液が臭い場合は歯周病を疑うサインだと思ってください。
唾液の臭いの確認の手順を説明します。
まず石鹸で手をきれいに洗ってください。石鹸の臭いが手にのこらないよう十分にすすぎます。次に指を舌の表面・舌と歯茎の間・舌の裏側に差し入れゆっくり触ってから指を出し指の臭いを嗅いでください。
指から「腐った玉ねぎ」や「温泉の硫黄」のような臭いがするなら歯周病である可能性が高いと考えましょう。
自分の息の臭いは自分では気づきにくいものです。とはいえ他の人に「私の息は臭くありませんか」とは聞きにくいでしょう。家族に聞くのですらためらわれるかもしれません。
聞けないでいるうちに息の臭さが増してしまっては困りますから、自分でできる範囲のセルフチェックをしましょう。
セルフチェックの方法はいくつかありますが、実行しやすい方法を紹介します。
コップを口に当て息をゆっくり吐いてください。そのコップの中の臭いを静かに嗅いでみましょう。強い臭いがあれば口臭のサインです。
歯ブラシの臭いを嗅いでみるのも1つの方法です。歯磨き粉をつけずに歯ブラシで歯を空磨きしてください。歯ブラシに臭いがあるようなら口臭がある可能性があります。
使用後のデンタルフロスや歯間ブラシの臭いを嗅いでみるのも悪くない方法です。
自分の口臭を知る1番確実な方法は歯科で口臭チェックを受けるという方法です。
歯科でチェックというとセルフチェックではないと思われるかもしれませんが、専門家の診断を仰ぐという方法を選択することも立派なセルフチェックになります。
先に紹介した2つの方法では臭いと感じることはできても、臭さの原因である可能性が高い歯周病に罹っていると自分で断定することはできません。
断定できなければ根本的な口臭対策を立てることは難しいといえるでしょう。歯科で口臭チェックを受ければ口臭を知るのと同時に、口臭への有効な対策も知れて一石二鳥になるのではないでしょうか。
歯周病の臭い対策
歯周病になると口臭がするのは、歯周ポケットにたまったプラークから悪臭を発する揮発性硫黄化合物が発生するためです。
歯周ポケットにたまったプラークが口臭の原因なのですから、根本的な対策としてプラークを除去しなければなりません。またプラークをためないために口の中を清潔に保つ必要があります。
歯周ポケットにたまったプラークの除去を自分で行うのはたいへんです。プラークをなくそうと爪楊枝で歯と歯茎の間をほじったり強く歯ブラシでこすったりはしないでください。
こうした自己流のプラーク除去は、歯周病で炎症をおこしている歯茎をさらに傷つけてしまう可能性がありますので、歯科医の指導のもとで適切なプラーク対策をとりましょう。
歯周病による口臭をなくすには歯科で歯周病治療を受けます。歯周病の治療は進行度によって治療期間が長くなる場合がありますが、途中で治療をやめてしまわないようにしてください。
歯周病治療では、はじめに歯磨きの練習と歯石の除去を行います。歯磨きによるブラッシングは歯茎の炎症を鎮め歯石が見えやすくなるため、効果的に歯石除去を行えるようになります。
歯のかみ合わせの調整も歯周病治療の大きなポイントです。かみ合わせが悪いと歯槽骨が吸収しやすくなり、吸収してしまうと元には戻りません。
歯周病はいったん沈静化しても再発する可能性が高い病気です。再発を防ぐために通院治療が終わったあとも定期的に歯科でメンテナンスをしましょう。
歯磨きはプラークを増やさない・発生させないための基本です。できれば歯科医の指導のもとで正しい歯磨き方法を学びましょう。
歯ブラシによるブラッシングは歯に付着した食べ物のカスを除去するだけではなく、歯茎の炎症を鎮め引き締める効果があります。
歯磨きは歯ブラシ以外にもデンタルフロスや歯間ブラシを併用すると効果的です。
歯と歯の間は歯ブラシが届きにくい場所でプラークが発生しやすい要注意ポイントといえます。デンタルフロスや歯間ブラシを使い歯と歯の間のカスを取り除きましょう。
引き締まった歯茎になると歯周ポケットにプラークがたまりにくくなると同時に、口臭の原因である揮発性硫黄化合物の発生が少なくなります。
人間の唾液は無味無臭な液体で健康な人で1日当たり1~1.5リットルも分泌されます。唾液には口の中を清潔に保つ効果があり、唾液が少ない状態は歯周病による口臭が発生しやすい状態です。
唾液の量は体調や飲んでいる薬などによっても変化しますが、摂取する水分量によっても変化します。口臭が気になるときはこまめに水分を摂取し唾液の量を増やしましょう。
水分摂取といっても甘い清涼飲料やコーヒーでは口の中にカスが残り口臭の元になりがちです。できれば水か白湯で水分を摂取するのがいいでしょう。
口臭が気になるときはガムを噛むのもおすすめです。ガムを噛むことで唾液の分泌が促進され口の中が清潔になる効果が期待できます。
大切な会議や正式な場面でガムを噛んでいるのは不適切かもしれませんが、日常の場面ではガムを噛んでいても人に不適切な印象を与えにくいでしょう。
ガムは携帯しやすい上にどこでも手に入る便利な口臭対策用品といえます。特にキシリトールが配合されたガムは唾液の分泌が促進されやすく口臭対策として利用しやすいアイテムです。
職場のデスクなどにガムのボトルを置いている人を見かけることがあります。あれはガムを噛んで眠気覚ましをしているだけではなく口臭対策として噛んでいるのかもしれません。
まとめ
口臭は自分では気づきにくく、人に指摘されてはじめて気づく場合があります。指摘されたときの恥ずかしさや不愉快さは言葉にできないものではないでしょうか。
歯周病になると徐々に息が臭くなっていきます。この臭さの正体は歯周病の細菌が発する揮発性硫黄化合物です。
自分の息が「腐った玉ねぎ」や「温泉の硫黄」のような臭いがするのは衝撃的なことかもしれませんが、歯磨きと歯科での歯周病治療で大きく改善できます。
息が臭いのではないか歯周病ではないかと不安になったときは、歯科で口臭チェックを受け不安を解消することが大切です。また歯科での定期的なメンテナンスを受けていれば不安も少なくなります。
参考文献