本記事では、歯周病の各種類と分類、そしてそれぞれの特徴について詳しく解説します。 特に以下の内容を中心に解説していきます。
- 歯周病の分類
- 歯肉病の新しい分類について
- 歯周病の治療法など
歯周病には「歯肉炎」「歯周炎」で分類されており、歯周病の分類について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までご覧ください。
歯周病とは
歯周病は、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こる疾患で、口腔ケアの不足や食生活の影響で増加する歯垢(プラーク)によって引き起こされます。プラークの蓄積は、炎症を引き起こし、さらに進行すると歯槽骨を破壊し、歯の動揺や抜け落ちにつながります。特に高齢者に見られる増加傾向があります。歯周病の理解と早期対策は、口腔の健康維持にとって重要です。
歯周病の原因
まずは歯周病の原因について詳しく見ていきましょう。
歯ぎしり、くいしばり
「歯ぎしり」や「くいしばり」は、通常の咀嚼時間を大幅に超え、強い力で歯を噛み締めます。これは歯槽骨に大きな負担をかけ、歯周病を既に罹患している人には特に深刻な影響を及ぼします。歯槽骨の吸収が進み、歯が動揺し、最終的には抜歯が必要となる危険性が高まります。
不規則な食習慣
不規則な食生活や甘いものの過剰摂取は、歯周病のリスクを増大させます。食事の後に適切なブラッシングができず、歯垢が増える可能性があります。これに加えて、血行不良により抵抗力が弱まり、症状が出やすくなる場合もあります。糖分の多い食事や不健康な食習慣は、歯周病だけでなく糖尿病とも深く関わりがあります。適切な栄養バランスと食生活の管理が重要となります。
ストレス
ストレスは歯周病の進行を促進する可能性があります。ストレスが溜まると交感神経が優位になり、唾液の分泌が減少します。唾液には歯周病菌に対する免疫物質が含まれているため、その分泌減少は口腔内の自浄の低下を意味します。さらに、ストレスはコルチゾールの分泌を増やし、免疫活動を担っているリンパ球の働きを低下させます。これにより、免疫力が低下し歯周病のリスクが高まります。
喫煙
喫煙は歯周病のリスクを高め、治療による影響を阻害します。タバコの煙は口から吸収され、有害物質が血管を収縮させ、歯ぐきの血流量を減少させます。これにより、歯周病の原因となる細菌が繁殖しやすくなり、歯を支える骨が溶けて歯が失われる可能性があります。また、喫煙者では炎症反応が抑えられ、歯ぐきの出血や腫れが現れにくいことも特徴です。
歯周病の分類
歯周病の原因を見てきましたが、次は分類について見ていきましょう。
壊死性歯周炎
壊死性歯周炎は、歯肉の壊死と潰瘍が特徴的な稀な歯周病です。出血、疼痛、発熱、リンパ節の腫脹、口臭などが伴い、原因は口腔衛生不良、ストレス、喫煙、免疫不全などがあります。この病状はHIV感染者にも見られます。
慢性歯周炎
慢性歯周炎は、歯肉炎が進行し歯槽骨に影響を及ぼす病態です。症状には歯茎の腫れ、痛み、出血、口臭などがあり、進行すると歯がぐらつき、最悪の場合、歯が抜け落ちます。軽度、中等度、重度の3つの段階に分けられ、急性症状では腫れや痛みが強く出ます。早期治療が重要です。
侵襲性歯周炎
侵襲性歯周炎は、10〜30代で発症することが多く、急速に進行します。病状は遺伝的要因や環境要因に大きく影響を受け、同じ家族で症状が現れることも特徴的です。プラークの量とは関係なく病状が進行し、早期診断と積極的な治療が必要となります。年齢と歯周病の関連性は、一概には言えません。
歯周病の新しい分類
新分類では歯周病は一つにまとめ、その重症度・複雑度により4つのステージ(Ⅰが軽症、Ⅳが重症)で診断しています。詳しくみていきましょう。
ステージⅠ
歯周病ステージⅠは、最も初期の段階で症状は軽微です。歯間部の組織損失は1-2mm、骨の減少は歯根の15%未満です。また、歯周炎による歯の喪失はありません。歯周ポケットの深さは4mm以内で、骨の減少は主に水平方向に見られます。
ステージⅡ
歯周病ステージⅡは、病状が進行し始める段階です。歯間部の組織損失は3-4mmに増え、骨の減少は歯根の長さの33%以下になります。まだ歯の喪失は起こらず、プロービングデプス(歯周ポケットの深さ)は5mm以内で、骨の減少は主に水平方向に見られます。
ステージⅢ
歯周病ステージⅢは、歯周病が進行し、症状が重くなる段階です。歯間部の組織損失は5mm以上、骨の減少は歯根長の1/3を超えます。歯周炎による歯の喪失が4本まで発生し、歯周ポケットの深さは6mm以上、垂直方向の骨の減少が3mm以上あります。 さらに、根分岐病変と中程度の歯槽堤の欠損が見られます。
ステージⅣ
歯周病ステージⅣは最も重篤な段階で、深刻な状態です。歯間部の組織損失は5mm以上、骨の減少は歯根長の1/3以上で、歯周炎により5本以上の歯が失われます。咀嚼機能障害、二次性咬合性外傷、重度の歯槽堤欠損、咬合崩壊・歯の移動・フレアアウトが見られ、歯数は20本(10対合歯)未満となります。
歯周炎の進行リスクのグレード
今度は進行リスクのグレード分けの詳細を見ていきましょう。
グレードA
歯周炎のグレードAは進行が遅い段階です。5年以上骨吸収や組織損失(CAL)の進行が無く、骨吸収の割合は年齢に対して0.25%未満です。バイオフィルム(歯垢)の蓄積が見られるものの、組織破壊は少ない状態です。また、この段階では喫煙歴は無く、血糖値は正常で糖尿病の診断はありません。
グレードB
歯周炎のグレードBは中程度の進行を示します。5年で2mm未満の骨吸収や組織損失(CAL)が見られ、年間骨吸収率は年齢に対して0.25%-1.0%です。バイオフィルム(歯垢)の蓄積に見合った組織破壊があります。 リスク因子としては、1日10本未満の喫煙や、HbA1c7.0%未満の糖尿病が含まれます。
グレードC
歯周炎のグレードCは急速な進行を示します。5年間で2mm以上の骨吸収や組織損失(CAL)が確認され、年齢に対して年間骨吸収率は1.0%以上です。急速な進行や早期発症を示す臨床症状が見られ、組織の破壊はバイオフィルムの蓄積よりも顕著です。 リスク因子には、1日10本以上の喫煙や、HbA1c7.0%以上の糖尿病があります。
歯周病の治療法
歯周病の治療法について詳細を見ていきましょう。
歯石除去
歯周病の治療法の一つが歯石除去で、スケーリングとSRP(スケーリング&ルートプレーニング)の2つの主要な手法があります。スケーリングは目に見える歯石の除去で、歯石が少なければ1〜2回の施術で終了します。 一方、SRPは麻酔下で歯周ポケット内の歯石を除去します。これにより歯周組織が改善し、ポケットの深さが浅く維持されるとメインテナンスに移行します。
歯周外科手術
歯周外科手術は、歯周病の治療法の一つで、普通の歯石取りでは難しい部分の歯石を除去します。また、歯周ポケットを浅くして、プラークが溜まりにくく改善します。 一部の症例では、骨を再生させる特別な手術も可能です。主に、一般の治療だけでは対応できない中等度から重度の症状に適応されます。
まとめ
ここまで歯周病の分類についてお伝えしました。 歯周病の分類についての要点をまとめると以下の通りです。
- 新分類では歯周病は一つにまとめ、重症度・複雑度により4つのステージに分類される
- 歯周病の進行リスクのグレードは3段階あり、進行の遅いAから進行の速いCまである
- セルフチェック項目で該当する内容が多い場合は病院で診察してもらうことを推奨する
これらの情報が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。