歯周病は歯茎の腫れや、症状が進むと歯がグラグラしてくる病気です。自覚症状が出にくく、放っておいて症状が悪化すると抜歯しなければならなくなるケースもあります。
歯茎の腫れ・出血・口臭など歯周病の疑いが出始めたら、すぐに歯科医院で検査を受け治療を開始すると良いでしょう。
しかし、歯周病の検査は痛いという話を聞き躊躇ってしまう方もいるようです。実際のところ、歯周病の検査は痛いのでしょうか。
本記事では歯周病の検査について、検査内容や流れも含めて解説していきます。
歯周病の検査は痛い?
歯周病はむし歯と同じように誰もがかかりやすい病気です。
歯周病は症状が進行していても痛みがなく、歯周病という自覚を持ちにくいことから、健診や検査を受けずにいる方もいるでしょう。
また歯周病の症状を知らないため、歯周病にかかっていることに気がつかないケースもあります。
歯周病が疑われるような症状が少しでも出たら、早いうちに検査を受けると良いでしょう。
しかし、歯周病の検査は痛いという話を耳にして、検査に踏み出せない方もいるようです。
歯周病の検査では、歯と歯茎の隙間に器具を入れて、歯周ポケットと呼ばれる溝の深さを調べます。歯茎が炎症していると、器具が触れた際に痛みを感じることが多いようです。
そのため、歯周病の検査は痛いと感じる方がいるのでしょう。
ただし、検査では痛みを感じないよう、力を入れずに優しく器具を入れていきます。また、痛みといってもチクチクとした違和感のようなものを覚えるという方もいます。
痛みの感じ方や耐性には個人差があるので、「歯周病の検査は痛い」と思いながら検査を受けてみたところ、それほどでもなかったというケースもあるでしょう。
あまりにも痛みを感じる場合は、歯科医師に相談してみてください。無理な我慢はストレスに繋がります。
また痛みのあまり必要な検査を受けるのを避けてしまい症状が進行してしまうと、初期治療だけでは済まなくなり、外科的治療に繋がる恐れがあります。
痛みや違和感に敏感な方は、痛みが発生する恐れのある検査が含まれているのを知っておくだけでも、心の準備ができるでしょう。
歯周病の検査内容は?
歯周病の検査はどのようなことを行うのでしょうか。
特に歯の検査が苦手な方にとって、検査内容があらかじめわかっていれば、不安を軽減できるかもしれません。
ここでは、歯周病の検査内容を紹介していきます。
問診
初診の場合は問診が欠かせません。歯科医院では、問診票に基づいて問診が行われるケースが殆どです。
まず、問診票に沿って、歯・歯茎・口腔内の状態について回答します。
また、歯や歯茎といった口腔内だけでなく、現在の健康状態・罹患している病気の有無・服用している薬・アレルギーなどについて、わかる範囲で詳しく記入していきます。
治療計画を立てる際に、問診票に記入された情報が考慮されるので、なるべく正確に記入すると良いでしょう。
視診
問診が終わると、次は歯や歯茎の状態を確認する視診です。
実際、症状がどの程度進んでいるのか、どのような状態なのかを歯科医師が確認します。
ここでは口腔内の現状を把握するだけでなく、診断に必要な検査の有無を見極めていきます。
プロービング検査
歯周病の基本的な検査の一つが、プロービング検査です。
特に初期段階での歯周病は、歯と歯茎の間にできる歯周ポケットと呼ばれる隙間の深さで診断されます。
プロービング検査では、プローブというメモリのついた針状の金属の器材を使用し、歯と歯茎の隙間にプローブを差し込み歯周病ポケットの深さを測っていくのです。
エックス線検査
エックス線検査では歯茎の下に隠れている歯槽骨の高さを調べることができます。
歯周病の症状が進むと歯槽骨が溶けていきます。
エックス線検査は、歯槽骨の状態や歯周病で失われてしまった歯を支える骨がどの程度残っているかを観察するのに適している検査です。
プラーク付着率検査
歯周病を発症する原因ともいわれているのがプラークです。
プラークは歯の周辺に付いた乳白色の粘性状汚れのことで細菌の塊です。歯周病の治療を進めるうえで、プラークの除去と付着予防をするのは必要不可欠といえるでしょう。
プラークの付着率を調べることで治療方針や治療後の歯周病再発を防ぐ目安になります。
プラーク付着率検査は染色液を使用して、プラークがどこに付着しているかどうかを肉眼で確認します。
歯周病の検査の流れ
歯周病の検査は検査内容が多いように感じられ、どのような順序で行われるのか気になる方もいるでしょう。
歯周病の検査には1時間程度かかることが多く、検査は症状の進行具合や歯科医院によって多少の違いはあるものの、一般的には次のような流れで進みます。
カウンセリング
最初にカウンセリングが行われます。カウンセリングではどのように治療を進めたいかを歯科医師と相談しながら進められます。
疑問点はカウンセリングの際に解消しておくと、治療方針などに相違が生じることを防げるでしょう。
また、2回目以降の治療でもカウンセリングを設け、どのように治療を進めるかの説明を都度行う歯科医院が殆どです。
歯周ポケットの計測
歯周ポケットの深さで、歯周病の症状の度合いを診断できるので、まず行われる検査は歯周ポケットの計測です。
健康な歯茎ではポケットは1〜3mm程度の深さですが、4mmを超えると歯周病と診断されます。
出血があるかどうか確認
続いて行われるのが、歯茎の腫れや出血があるかどうかの確認です。
軽度の歯周病では歯茎が赤く腫れたり、歯磨きや固いものを食べると出血が見られたりします。検査の測定時に出血する場合も歯周病である可能性が高いといえます。
歯のぐらつきがないかどうか確認
歯周病が中程度まで進むと、歯のぐらつきが起こり歯が浮いているような感覚があります。
検査では歯のぐらつき具合を確認すると共に、骨が溶け始めていないかも確認をします。
エックス線検査
エックス線検査では歯茎の下にある歯槽骨の状態を調べます。
口腔内写真撮影
口腔内の写真撮影は歯の状態だけでなく、口腔内の環境を確認するためにも必要な検査です。また、歯茎の腫れといった歯周病の状態を記録しておく目的もあります。
写真で記録に残しておくことで、症状がどのように改善していったかを振り返ることができます。
かみ合わせや詰め物などを確認
かみ合わせは歯周病が悪化する原因の一つとされています。
かみ合わせが悪いと歯に負担がかかりやすいので、歯周病を発症している場合は、かみ合わせについても確認しています。
また、むし歯等の治療で装着された詰め物や被せ物の確認も必要です。詰め物などが歯に合っていないと、歯垢や歯石が付きやすくなります。
歯周病の原因である歯垢や歯石の発生を防ぐために、詰め物や被せ物の確認が行われることが多いです。
歯周病の程度に応じて、かみ合わせや詰め物などの調整を行う場合があります。
痛いと感じる検査の工程はどこ?
歯周病の検査で痛いと感じる工程は、歯周ポケットを計測するプロービング検査だといわれています。
実際プロービング検査では、歯と歯茎の隙間に細長い金属状の器具を入れていくので、その際に痛みを感じることが多いようです。
この検査では力を入れないようそっと器具が差し込まれる、その圧はわずか25g程度です。
本来は痛みを感じにくい検査とされていますが、すでに軽度の歯周病が出ている状態ですと、歯茎が炎症を起こしている可能性があります。
その炎症部分に器具が触れると痛みを感じやすいのかもしれません。痛みが不安であれば、歯科医師に相談すると良いでしょう。
また、歯周病の検査で、歯垢や歯石の除去を行うケースもあります。
スケーラーという専用の器具を使用して除去するのですが、この器具が炎症を起こしている歯茎に触れると、痛みを感じることが多いようです。
通常歯垢や歯石は痛みを感じないよう除去できるのですが、痛みの感じ方には個人差があります。
歯周病の検査の際、歯垢や歯石の付着が著しく、検査に影響を及ぼしている場合は先に軽く除去を行うケースもあります。
歯周病の検査が必要な理由は?
歯周病は痛みが生じないため、症状が進行していることに気がつきにくい病気です。
また歯茎の腫れや歯磨きで出血するなど歯周病のサインが出ていたとしても、緊急性が高い症状ではないので、検査や治療を後回しにしてしまう方もいるでしょう。
しかし、歯周病の検査は後回しにしないで、歯周病が疑われた時点ですぐに検査を受けることをおすすめします。
ここからは、歯周病の検査が必要な理由を説明していきます。
早期発見のため
歯周病にかかっていることに気づかず放置してしまうと、歯が抜けてしまうことにもなりかねません。
歯周病は初期の段階であれば、歯茎の腫れ・出血・口臭といった症状ですみますが、中程度に進むと歯が浮くような感覚や歯を支える骨が溶け始めてしまいます。
さらに重症化すると歯を支える骨がほとんど溶け、歯のぐらつきは酷くなり、最悪抜けてしまうでしょう。
歯周病の治療は症状が初期の段階で開始すると、初期治療を数ヶ月受ければ終了します。そのためには検査を受け、歯周病と診断されたら、すぐに治療を開始することが肝心です。
また、歯周病は次のような疾患に影響を及ぼすとされています。
- 脳血管疾患
- 動脈硬化
- 心臓疾患
- ピロリ菌感染胃疾患
- 骨粗しょう症
- 誤嚥性肺炎
- 糖尿病
- 肥満
- 早期低体重児出産
歯周病は細菌が原因で進行する病気です。細菌が上記の疾患などに悪影響を及ぼすことが判明しました。
特に上記の疾患などにかかっている方は、歯周病を放置せずに早めに検査を受けることをおすすめします。
歯周病の進行度合いを知るため
歯周病は自覚症状のない病気なので、歯周病の診断や症状の進行度合いは、検査を受けなければ正確には判明しません。
また歯周病の自覚はあったとしても、検査を受けないと症状が進行していることに気がつかない場合もあるでしょう。
歯周病は早めの段階で治療を受ければ、症状の進行を食い止められます。
また、歯周病は症状が進行してしまうと外科的治療が行われる場合があるでしょう。
外科的治療は症状の度合いにもよりますが、ポケットの除去・歯を支える骨の再生・増殖した歯茎の切除などが挙げられます。
手術は1〜2時間程度で局所麻酔を使って行われ、外来でできる程度の手術ではありますが、その後経過を見るために数ヶ月程度時間を要します。
外科的治療に進むほどの重症化を防ぐためにも、検査を受ける都度症状の進行具合を把握しておくと良いでしょう。
歯周病の症状があるなら定期的に検査を受けよう
歯周病の治療後に歯の健康を維持するために、歯科医院から歯垢や歯石がつかないよう正しい歯磨きの指導を受け、場合によっては生活習慣を見直すアドバイスを受けるかもしれません。
歯周病を予防するには、日頃のセルフケアが重要です。正しい歯磨きは歯周病の原因となる歯垢の付着を防げます。
またストレス軽減に繋がるようなアドバイスや生活習慣の指導を受けるのも、歯周病予防に大いに役立ちます。
たとえばストレスが原因とされている歯の食いしばりが起きてしまうと、一部の歯に負担がかかってしまいがちです。
歯周病が発症している時に、歯に過度な力がかかってしまうと症状の悪化に繋がるでしょう。
定期検査では治療後のセルフケアがしっかりとできているか、生活習慣やストレスで歯の状態が悪化していないかをチェックしてもらえる良い機会です。
歯周病は、一旦治療が終わりセルフケアを続けていたとしても、完治というものが難しい病気です。
少しでも疑わしい症状が出てきたら検査を受けるだけでなく、歯周病発症のサインを見落とさないよう定期的に検査を受けることをおすすめします。
まとめ
ここまで歯周病の検査について、検査内容や流れも含めて紹介しました。あわせて歯周病の検査は痛みを感じるのではという疑問についても解説してきました。
歯周病は初期の段階で痛みを生じにくい病気なので、検査を後回しにしがちです。また、痛みに弱い方にとっては、検査を受ける際の痛みが不安で検査を躊躇っていたかもしれません。
歯周病を重症化させず、治療を短期間で終わらせるには、初期の段階で治療を受けることが必須ともいえるでしょう。
早い段階で歯周病の進行を食い止めることが重要なので、積極的に検査を受けてみてください。
参考文献