妊娠中はホルモンバランスが変化するため、歯茎が腫れる・歯茎が痛いなどの症状が出やすくなります。この「妊娠性歯肉炎」は、放置すると胎児へ影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。
今回は、妊娠性歯肉炎の特徴や原因、治し方などについて詳しくお答えしていきます。
妊娠性歯肉炎とは?原因や症状

- 妊娠性歯肉炎はどのような病気ですか?
- 妊娠性歯肉炎(にんしんせいしにくえん)とは、妊娠中に生じる歯肉炎です。 歯肉炎は妊娠中の女性によくみられる症状で、妊娠性歯肉炎の罹患率は妊娠女性の66~98%と報告されています。ただし、研究によって罹患率は異なります。
- 妊娠性歯肉炎になるとどのような症状が現れますか?
- 妊娠性歯肉炎の主な症状は、歯肉(歯ぐき)の腫れ、痛み、出血などで、一般的な歯肉炎とほぼ同じです。 歯肉炎とは歯肉(歯茎)に炎症が起こる病気で、歯周病の一つです。歯周病には、歯肉炎・軽度歯周炎・中程度歯周炎・重度歯周炎(歯槽膿漏)の進行段階があります。
- 妊娠性歯肉炎の原因は何ですか?
- 妊娠性歯肉炎の主な原因は、妊娠中のホルモンバランス変化によるものです。 妊娠中は、「エストロゲン」や「プロゲステロン」という女性ホルモンの分泌が急激に増えます。このホルモンによって歯周病菌の一種「プレボテラ・インターメディア」の動きが活発になることから、ごく少量の汚れ(歯垢)でも歯肉炎になりやすくなるのです。 また女性ホルモンの影響によって唾液の粘性が高まり、汚れを洗い出す働きである「自浄作用」が下がります。その結果、妊娠前よりも歯肉が腫れやすく出血が起こりやすい環境になります。
- つわりが原因で歯肉炎になることはありますか?
- つわりで吐き気がひどくなると歯磨きが不十分になりやすく、磨き残しが増えて歯肉炎が悪化することがあります。 つわりや食生活の乱れによって口腔内が不衛生になると、歯肉炎が悪化しやすくなります。つわりが落ち着いた後も汚れが蓄積したままにしておくと、歯肉炎が悪化し歯周炎へ進行することがあるため注意が必要です。
- 妊娠性歯肉炎は、いつから起こりますか?
- 妊娠性歯肉炎は、妊娠初期(妊娠2カ月)〜8カ月ごろにかけて発症しやすいです。 妊娠が成立すると、エストロゲン・プロゲステロンといった女性ホルモンの分泌が増加します。ホルモンにより歯周病菌が活発になり、歯肉炎になりやすくなるのです。
妊娠性歯肉炎の治療方法・対策

- 妊娠性歯肉炎にならないための対策法はありますか?
- 一般的な歯肉炎(歯周病)と同じように、しっかりとプラークコントロールすることが大切です。妊娠中は歯肉炎になりやすいため、普段以上に気をつける必要があります。 具体的には、食後の歯磨きをしっかりとする、歯科医院で歯のクリーニングをしてもらうなどの対策をとって、妊娠中でも口腔内を清潔に保つ事が大切です。 歯肉が腫れている部分は出血しやすくブラッシングを避けてしまう人がいますが、ブラッシングしないと歯肉炎が悪化し悪循環に陥ってしまいます。歯と歯肉の間にブラシの毛先を当て、軽い力で小刻みにブラシを動かすとよいでしょう。
- つわりがひどくて歯が磨けないのですが
- つわりがひどいときには無理をせず、体調に応じて歯を磨きましょう。食後でなくてよいので、体調がよいとき、気分が落ち着いているときにゆっくりと念入りに歯を磨くとよいです。 歯ブラシを口に入れるのがつらいときは、子ども用の小さなヘッドの歯ブラシを使う方法がおすすめです。さらに歯間ブラシ、デンタルフロス、インタースペースブラシなどを使って丁寧に磨きます。つわりで歯磨き粉のにおいや味に反応する人は、歯磨き粉をつけずにブラッシングするのがよいでしょう。
- 歯磨きができないときは、どうしたらいいですか?
- 体調が悪く歯磨きができないときは、水分を取って口腔内の乾燥を防ぎましょう。 もともと唾液には菌を減らす働きである「抗菌作用」や汚れを洗い出す働きである「自浄作用」があります。しかし妊娠中はホルモンバランスの変化によって唾液の分泌量が減り、口腔内が乾燥しやすくなります。 歯周病菌が繁殖しやすい環境なので、まめに水を飲んだりうがいをしたりするとよいでしょう。洗口液を使い口をゆすぐ方法もあります。よく噛むと唾液の分泌が促されるため、ガムなどを噛むのもよいでしょう。
- 妊娠中に歯科医院でクリーニングをしてもらえますか?
- 妊娠中でも、歯科医院で専用の器械を使ったクリーニング(PMTC)をしてもらえます。歯磨きだけでは取り切れない歯石や汚れを、きれいに除去できます。 歯のクリーニングに適した時期は、妊娠中期(妊娠16〜28週)ごろです。体調がよいときにクリーニングをしてもらうと安心です。妊娠後期はおなかが大きくなり、仰向けで長時間過ごすのがつらくなるため、なるべく妊娠中期までに受診するようにしましょう。クリーニングだけではなく、歯並びや歯肉の状態に合わせた正しいブラッシング法を教えてもらえます。 歯科医院を受診する際は母子健康手帳を提示し、治療中に体調や気分が悪くなったらすぐに伝えてください。妊娠中でも歯科治療は可能ですが、使える薬や治療方法は限られることがあります。しかし診察自体は妊娠期間を通じて可能ですので、気になることがあれば歯科医院で相談してみましょう。
妊娠性歯肉炎の胎児への影響と産後の様子

- 妊娠性歯肉炎が、胎児へ影響を及ぼすことはありますか?
- 重度の妊娠性歯肉炎になると、早産や低体重児出産のリスクが高まります。 歯周病菌によって炎症が起こると「サイトカイン」という物質が増加し「プロスタグランジン」という物質の分泌を促します。この「プロスタグランジン」は分娩を促す物質でもあるため、子宮の収縮や陣痛が促され早産を引き起こすのです。 歯周病菌が歯肉から血管に入り、血液に乗って全身を巡り子宮に影響が及んで、胎児の発育不全が起こるという報告もあります。
- 産後、妊娠性歯肉炎は治りますか?
- 出産後、妊娠性歯肉炎は自然に治癒することが多いです。出産すると女性ホルモンが減少するため、歯肉炎の症状が軽減するためです。 ただし妊娠中に歯肉炎が進行して歯周病になると、歯槽骨(歯を支えている骨)が破壊され治癒しないことがあります。妊娠中に歯肉炎が悪化しないように、しっかりとケアすることが大切です。
- 出産後に歯周病が改善しない場合、どうすればいいですか?
- 早めに歯科医院を受診し、適切な処置をしてもらいましょう。産後は育児で忙しくなるため、歯磨きがおろそかになりむし歯や歯周病になる人がいます。ただ歯科医院によっては、託児所を用意していて治療中に子どもを預かってくれるので、積極的に利用し治療を受けましょう。 歯周病菌は、唾液を介して母子感染するリスクがあります。子どもとの食器の共有や、食事の口移しなどは避けましょう。
編集部まとめ

妊娠中は、ホルモンバランスが変化することにより歯肉炎になりやすいことが分かっています。またつわりで歯磨きがおろそかになると、歯肉炎(歯周炎)になるリスクがさらに高まります。わずかな歯肉の腫れだとしても、放っておくと悪化しさまざまな影響を与えることがあるため、定期的に歯科医院で検診を受けクリーニングをしてもらいましょう。