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日本歯周病学会専門医・認定医のブログ

歯周病の口臭はどんな匂い?セルフチェック・対策について解説

歯周病 口臭 どんな匂い

心筋梗塞や脳梗塞など、放置すれば全身に重大な影響を及ぼすのが歯周病です。重症化しない限り見た目ではわかりにくいので、発見が遅れることもあるでしょう。

実は、歯周病は「口臭」というサインで口内の異常を知らせてくれる病気です。この記事では、歯周病独特の口臭や、セルフチェックの方法について詳しく解説します。

正しい知識を持って歯周病を早期に発見し、大切なお口の健康を守りましょう。

歯周病の口臭はどんな匂い?

鼻を塞ぐ女性

歯周病を原因として発生する口臭は、一般的に「腐ったタマネギのような匂い」と表現されることもあります。

同じく口内のトラブルであるむし歯でも口臭が発生することがありますが、長期間放置しない限り、生活に支障をきたすほどの悪臭にはなりません。

ところが、歯周病で発生する口臭は、歯周病が重症化する前に強烈な匂いに変わってしまいます。

できるだけ早く自分の口臭に気づき、原因を取り除くことが大切です。

歯周病の口臭のセルフチェック方法は?

歯を見せる女性

歯周病による口臭のセルフチェック方法は次の通りです。

  • コップを使用する方法
  • 袋を使用する方法
  • 唾液をチェックする方法
  • 測定器を使用する方法

人間の口と鼻はつながっているため、自分の嗅覚で正しく口臭を確認するのは非常に難しいといわれています。

家族や友人など指摘をしてくれる人がいれば良いですが、口臭はデリケートな問題のため、わざわざ指摘してくれる人も少ないでしょう。

周囲の言動から自分の口臭を自覚する場合もありますが、できれば事前に対処したいものです。

「自分の口臭が気になる」という方は、ここで紹介するセルフチェック方法を試してみましょう。

コップを使用する方法
白いコップ

空のコップを口に当てて息を吐き、溜まった息の匂いを確認します。起床後すぐ、もしくは空腹のタイミングは誰でも口臭が発生しやすいので、神経質になる必要はないでしょう。

ただし、歯磨きをした直後など、通常は口臭が発生しづらいタイミングで匂いが気になる場合は注意が必要です。

そのような口臭は、歯周病や内臓の異常などが原因と考えられます。

コップを使ったセルフチェックだけで原因を突き止めるのは難しいため、気になる場合は口臭検査を実施してくれる医療機関に相談しましょう。

袋を使用する方法

買い物袋などとして使われるビニール袋で、口臭をチェックする方法があります。空のコップを使用するのと同じ要領で袋の中に息を吐き、溜まった息の匂いを確認します。

起床後すぐや空腹時など、生理的口臭が発生しやすいタイミングのものであれば心配することはありません。

歯磨き後に気になる口臭がある場合は、口臭の有無を数値で判断してもらえる医療機関に相談することで、原因を突き止められるでしょう。

唾液をチェックする方法

舌の上や歯茎を清潔な指やティッシュで拭い、唾液の匂いを確認します。

口臭が発生していると感じる場合は、舌に汚れが溜まっていたり、歯周病になってしまったりしている可能性が高いです。

いずれにしても口臭の原因を特定し、対処する必要があります。医療機関で口臭検査を受け、その後は適切な治療を行ったりケア方法を学んだりしましょう。

測定器を使用する方法

市販の測定器で口臭を数値化できます。口臭チェッカーとも呼ばれ、オンラインショップでも手に入りやすいです。

息を吹きかけるだけで口臭チェックができる便利な商品ですが、測定のタイミングで結果にばらつきがあることが多いことも実情です。

数値が上がったり下がったりすることを繰り返し確認することで、余計に口臭が気になって精神的な負担になる場合もあります。

正確に測定したい場合は、医療機関の口臭検査を受けるほうが確実でしょう。

歯周病の口臭の原因

測定器 歯科治療

歯周病の口臭の原因は複数ありますが、特に以下の2つの気体が原因の90%を占めるとされています。

  • メチルメルカプタン
  • 硫化水素

それぞれ確認していきましょう。

メチルメルカプタン

歯周病患者さんの口内に最も多く存在するのが、メチルメルカプタンです。有毒な揮発性の気体で、歯周病菌が食べかすに含まれるタンパク質を分解する過程で発生します。

「腐ったタマネギのような匂い」と表現される独特な悪臭で、歯周炎や口内炎などから発生し、特に舌苔から多く発生するといわれています。

次に挙げる硫化水素と並んで口臭の原因ですが、歯周病では特にメチルメルカプタンが占める割合が大きいでしょう。

歯周病が原因で発生するものですが、メチルメルカプタン自体に毒性があります。

歯周病でメチルメルカプタンが発生し、さらに歯周病を進行させるという悪循環を作らないためにも、口臭は早めに対処しましょう。

硫化水素

硫化水素は、メチルメルカプタンと並ぶ歯周病による口臭の原因物質です。特徴は「腐った卵のような匂い」といわれています。

硫化水素もメチルメルカプタンと同様に揮発性の気体のため、発生すると非常に鼻につくでしょう。この匂いも歯周炎や口内炎・舌苔から多く発生します。

しかし、硫化水素は温泉や火山などで発生し、濃度によっては死亡事故が起きる有毒ガスです。

また、癌の原因となる活性酸素を増やす働きまで指摘されているため、口臭が気になる場合は早めに対処するといいでしょう。

歯周病が進行するほど口臭は強くなる

頬を押さえる女性

歯周病が進行するにつれて、口臭はさらに悪化する傾向にあります。歯周病が進行することで現れる「歯槽膿漏」になると、口臭が悪化するためです。

歯槽膿漏は、歯の根元あたりに膿の塊ができる症状です。何かがきっかけでこの膿の塊が破けると、強烈な匂いを放ちます。

歯周病が、歯槽膿漏ができて破けるような状態まで進行すると、口臭よりも歯や歯茎が深刻な状態になるため早急な治療が必要です。

また、歯茎の炎症によって起こる「歯周炎」を治療せずに放置してしまうと、今度は歯と歯茎の間にある歯周ポケットが深くなっていきます。

狭くて酸素の届きにくい歯周ポケットは、酸素を嫌う歯周病菌の活動を活性化する条件が揃っています。しかも歯磨きなどで自分では汚れを取り除きづらい場所です。

そのままさらに汚れが溜まれば、口臭の原因となるメチルメルカプタンや硫化水素が多く発生することになるでしょう。

歯周病の治療方法は?

レントゲン説明

口臭の原因となる歯周病は、どのような治療が行われるのでしょうか。現在の歯周病治療は、主に以下の2つに分類されています。

  • 歯周基本治療
  • 歯周外科治療

それぞれ、その治療の内容を確認していきましょう。

歯周基本治療

歯周病の程度にかかわらず、すべての歯周病治療で行われるのが歯周基本治療です。歯周病の原因である歯垢や歯石を取り除き、口内環境を整えます。

歯周基本治療は医療機関だけで行われるのではなく、自宅での歯磨きも含まれていることも覚えておきましょう。

歯科医院で行われる治療は、スケーリングやルートプレーニングです。スケーリングはスケーラーという器具で、プラークが石灰化して固くなった歯石を取り除きます。

スケーラーには超音波スケーラーとハンドスケーラーがあり、歯石が付着した場所や状態によって使い分けます。

一方のルートプレーニングは、歯根の表面をなめらかにするものです。すでに起きている炎症に対処するだけでなく、歯根表面をなめらかに整えることで、新たに歯垢が付着するのを予防する役割があります。

これらの治療で歯周ポケットの深さが改善されれば、治療はいったん終了です。治療後も歯科医院で定期的なクリーニングを受けるといいでしょう。

歯周外科治療
歯科治療

先述の歯周基本治療で歯周ポケットの深さが完全には改善されなかった場合や、通常の歯周基本治療で歯垢や歯石が取りきれなかった場合は、歯周外科治療が必要になります。

麻酔を使用して該当箇所を切開し、目視できるようにして歯垢や歯石を取り除いていきます。

また、歯周ポケットの深さが問題になっている場合は、歯茎を切開し、強制的に歯周ポケットの深さを減少させることも1つの方法です。

切開によって縫合が必要になった場合、おおよそ1-2週間後に抜糸を行います。こちらも歯周ポケットが改善されれば治療はいったん終了です。

その後は定期的なクリーニングを中心に、メンテナンスの段階に移行します。

自分でできる口臭対策は?

歯科衛生士歯ブラシ

歯科医院で定期的にメンテナンスを行うのはもちろんですが、まずは自宅でもできる口臭対策が知りたい方も多いでしょう。

ここでは、事前に口臭を防ぐための対策を詳しく解説していきます。今回ご紹介するのは以下の5つの方法です。

  • 正しい歯磨きで汚れをしっかり落とす
  • デンタルフロスを使用する
  • デンタルリンスで除菌やマスキングをする
  • 舌も汚れていないかチェックする
  • 口内の乾燥が気になるならよく噛んで食べる

1つずつ確認していきましょう。

正しい歯磨きで汚れをしっかり落とす

口臭対策の基本となるのが歯磨きです。日頃から正しい歯磨きをして歯垢や歯石を付着させないことで、歯周病の原因のほとんどが取り除かれます。

歯磨きで意識したいのは、歯垢や歯石が付着しやすい場所に、ピンポイントで歯ブラシの毛先を当てることです。

このとき、力を入れすぎないようにしましょう。余分な力が入っていると歯ブラシの毛先が寝てしまい、歯垢を効率的に掻き出せません。

歯ブラシを小刻みに動かし、1箇所につき10〜20回は磨くようにします。特に就寝中は口内が乾燥し、細菌が繁殖しやすい環境です。

特に就寝前には時間に余裕をもち、丁寧な歯磨きを心がけてください。

デンタルフロスを使用する

口臭予防には、歯ブラシと併せてデンタルフロスを使用することがおすすめです。

デンタルフロスとは繊維を撚り合わせた細い糸のことで、歯と歯の間の狭い隙間に付着した歯垢を絡め取ってくれます。

糸単体のものやホルダー付きのものなど、複数のタイプのものが販売されているので、自分に合ったものを選ぶようにしてください。

糸だけのものであれば、都度適当な長さに切って使います。

歯と歯の間に糸を入れたら、歯の表面をノコギリを使うように前後に動かしながら糸を取り出しましょう。このとき、糸を歯の表面に沿わせるようにするのがポイントです。

歯ブラシだけでは取り除けない歯と歯の間の歯垢にもアプローチできるので、歯垢除去率が格段に上がります。

デンタルリンスで除菌やマスキングをする

デンタルリンスで除菌やマスキングをすることで、口臭を軽減できます。マスキングとは、デンタルリンスの香りで口臭を感じにくくさせることを指します。

香りで口臭を目立たなくさせているだけのため、根本的な解決法でないことは覚えておきましょう。

デンタルリンスでの除菌は一定の効果はありますが、使いすぎると口内の必要な菌まで殺してしまい、かえって歯周病の原因菌が増えてしまうことがあります。

日々の歯磨きと定期的な歯科検診を行ったうえで、補助的に使用するようにしてください。

舌も汚れていないかチェックする
女性 歯

口臭予防というと歯の汚ればかりが気になりますが、舌が汚れていないかもチェックしてください。

先述のように、歯周病の口臭の発生源であるメチルメルカプタンや硫化水素は、歯周炎や口内炎・舌苔で多く発生するためです。

歯を歯ブラシで磨くように、舌も舌専用のブラシでケアしましょう。舌ブラシは歯科医院はもちろん、ドラッグストアでも市販されています。

歯ブラシで通常の歯磨きを終えた後、舌ブラシを水で湿らせ、舌の奥から前に向かって優しく撫でるように動かしてください。

5回ほど動かしたら一度水で舌ブラシの汚れを流し、再度5回ほど動かします。最後にデンタルリンスを使用することもおすすめです。

毎日の習慣にすれば口臭の改善が期待できますが、やり過ぎに注意してください。

口内の乾燥が気になるならよく噛んで食べる

口臭の原因の1つとして、口内が乾燥していることが挙げられます。口内の乾燥を防ぐには、食事の際に口を閉じてよく噛み、唾液を出すのが効果的です。

噛む回数の目安としては、30回程度が理想だといわれています。左右で10回・両方で10回・合計30回と考えておけば良いでしょう。

よく噛むことは唾液の分泌だけでなく、肥満防止や脳細胞の活性化などにつながります。全身の健康に効果があるため、ぜひ実践してください。

まとめ

笑顔の女性

歯周病を発症すると「腐ったタマネギのような匂い」が発生する可能性があります。歯周病が進行して口臭が発生することで、自分も周りの方も不快な思いをするでしょう。

まずは、紹介したセルフチェック方法で現状を確認することが大切です。気になることがあれば、早めに歯科医院に相談してください。

現在、症状がなくても、歯周病は生活習慣によって誰にでも起こりうる病気です。この記事の予防法を参考に、口臭の気にならない健康な口内環境を整えていきましょう。

参考文献

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