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40代の歯周病は抜歯が必要?歯周病で抜歯が必要な症状や抜歯以外の治療方法・抜歯後の治療も解説

歯痛の男性

「40代で歯周病にかかった場合、治療するには抜歯が必要なの?」と悩んでいる方もいることでしょう。

歯周病の治療に抜歯は含まれていますが、必ずしも抜歯するとは限りません。歯科医院では基本的に自分の歯を残す治療方法を優先するからです。

しかし、歯周病の進行具合によっては抜歯をせざるをえない状況も考えられるため、抜歯して放置をせず適切な治療を受けることが大切です。

そこでこの記事では、40代で歯周病にかかった際の抜歯の必要性や抜歯以外の治療方法・抜歯後の治療について解説します。

歯周病治療の知識を深め、医師の診断のもと適切な治療方法を選択しましょう。

40代の歯周病は抜歯が必要?

歯

40代の歯周病は必ずしも抜歯をするわけではありません。基本的にどの歯科医院もなるべく抜かないように治療する方法を選択するでしょう。

しかし、歯周病の進行具合によっては他の元気な歯に影響が出たり、他の病気の原因になったりするため抜歯を選択するケースもあります。

ひどい歯周病になると、隣り合わせの歯の歯周組織を破壊するのが特徴です。そのため、隣の歯に影響が出たり顎全体のバランスが崩れて噛み合わせが悪くなったりします

また、口の中に歯周病の原因菌が増えると、血液や呼吸器内に混入し心筋梗塞や動脈硬化症・肺炎などを引き起こしやすくなるでしょう。

仮に抜歯をした場合は、抜いて終わりではなく入れ歯やインプラントなどの抜いた歯を補う治療が必要です。

さらに重度の歯周病は口の中に歯周病の原因菌が多数存在するため、最も悪い歯を抜いたとしても再び他の歯が歯周病になる可能性があります。

抜歯の有無に関係なく、定期的な歯科検診や歯周病治療を継続して行うことが大切です。

40代の歯周病における抜歯の判断材料は?

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40代の歯周病における抜歯の判断材料は、次のものが挙げられます。

  • 歯周病の重症度
  • 口腔内の状況
  • 患者さんの年齢
  • 患者さんの希望
  • 歯科医師の知識・技術

歯周病における「抜歯」の判断材料は、歯周病の重症度・口腔内の状況・患者さんの年齢などさまざまな要因が考えられます

歯周病の進行具合が軽い場合でも、口腔内の状況や患者さんの年齢によって抜歯を選択せざるを得ない場合もあるでしょう。

抜歯の基準については明確なものがないため、まずはかかりつけの歯科医師に相談してみてください。

歯周病の重症度

歯周病の重症度によって、抜歯の有無が検討されます。歯周病の進行具合によっては、抜歯をせずに治療できるためです。

この後紹介しますが、切除療法・組織付着療法・歯周組織再生療法など、抜歯以外の治療方法が存在します。

ただし、残された歯の状態や口腔内の状況によっては抜歯を選択せざるを得ません。歯科医師に状況を説明してもらい、しっかりと話し合ってから決断しましょう。

口腔内の状況

抜けそうな歯

口腔内の状況によって、抜歯を選択する可能性があります。

歯周病の対象となる部位の状況が抜歯以外の治療を選択できる状態だとしても、治療後も進行を促すような口内環境であれば抜歯を選択することになるでしょう。

例えば、次のような状況は抜歯を選択する可能性があります。

  • 他の部位でも同じような進行具合の歯がある
  • 隣接する歯に影響を与えており、隣の歯も抜歯になる可能性が出てくる

上記のように対象の歯を残せるとしても、口内環境によっては「抜歯をすすめられる」可能性があるでしょう。

患者さんの年齢

歯周病における抜歯の判断材料には、患者さんの年齢が含まれています。歯周病が原因で抜歯するケースは、40代後半から60代前半にかけてが多い傾向にあるためです。

年齢を重ねると歯にも負担がかかり、抜歯を経験することが多くなります。抜歯すると隣りの歯にかかる負担が増加し、さらに抜歯を誘発する可能性が高くなるでしょう。

このように年齢を重ねると抜歯のリスクが高くなるため、他の歯の状態を考えて抜歯を選択することが大切です。

患者さんの希望

患者さんの希望により、抜歯を選択するケースがあります。顎骨が健康な状態であれば、抜歯をしてインプラント治療を選択できるためです。

抜歯を選択する際の年齢にもよりますが、歯は一生使うため長い年月を考えるとインプラントに切り替えるほうが適切な場合もあります。

抜歯を嫌がる患者さんはいますが、一方で「抜歯したのちにインプラントを入れてしっかり噛めるようになりたい」と考える患者さんもいるでしょう。

このように抜歯の必要性がどちらともいえない状況では、患者さんの希望で抜歯に至るケースもあります。

歯科医師の知識・技術

歯周病における抜歯の選択は、担当する歯科医師の知識・技術に左右する可能性があります。

歯周病の治療で抜歯やそれ以外の治療方法の知識が豊富な歯科医師であれば、必ずしも抜歯をすすめることはないでしょう。

歯周病治療専門の歯科医師であれば、歯や口腔内の状況を確認して適切な治療方法を提案してくれます。また、信頼する歯科医師に相談した場合は、歯科医師の提案に従う患者さんが多いでしょう。

より適切な歯周病治療を受けるには、担当する歯科医師選びが重要になるでしょう。

40代の歯周病で抜歯以外の治療方法

歯科治療

40代の歯周病を治療する場合、抜歯以外の治療方法は次のとおりです。

  • 切除療法
  • 組織付着療法
  • 歯周組織再生療法
  • 歯周形成手術
  • 歯周基本治療が重要

歯周病治療では上記のように抜歯以外の選択肢が多いです。抜歯は治療法のひとつのため、必ずしも抜歯になるとは限りません。

歯周基本治療を行い、歯や口腔内の状況をよく確認してもらいながら、適切な治療を選択するといいでしょう。

切除療法

切除療法とは、歯周病によって腫れて増殖した歯茎を切除して、深い歯周ポケットを改善するための外科手術です。

歯肉や歯槽骨の形態修正を行い、治療が必要な歯肉・歯周ポケットを減らします。 歯周ポケットを浅くしてプラークコントロールをしやすくするため、炎症を起こした歯周組織にアプローチしやすくなるでしょう。

ただし、切除療法は歯茎の位置が下がることで歯が長く見えます。また、歯根が露出することにより知覚過敏になりやすいため、近年では別の方法で治療することが多いです。

組織付着療法

組織付着療法とは、歯周ポケットの中の歯根にこびりついた歯周病菌や汚れを取り除いて、再び歯茎を歯根に付着させ歯周ポケットを浅くする治療方法です。

歯茎を部分的に開いて、歯周ポケットの奥の汚れを取り除きます。

一旦、歯茎を切り開くため、歯根の感染状況や汚れを確認でき歯周基本治療で取りきれない歯垢・歯石をしっかり取り除けるでしょう。

また、炎症によって破壊された歯槽骨の形態を整えられるため、歯周組織を健康な状態に導けます。

歯周組織再生療法

歯と医療器具

歯周組織再生療法とは、歯周病によって失われた歯周組織を再生させることを目的とした治療方法です。

例えば、骨移植術・歯周組織再生誘導法(GTR)・エムドゲイン法などがあります。治療の流れは、歯茎を切開して歯根の奥の歯周病菌・汚れ・歯石などを除去します。

その後、歯周組織の欠損部に再生材料を適用し、歯茎を縫合して経過観察する点が特徴です。

歯周組織再生療法は、技術や再生材料の進歩により、高い確率で成功が得られるようになりました。

ただし、うまく再生せず、病変が残ったままの状態の場合は追加の治療が必要になります。

歯周形成手術

歯周形成手術とは、歯茎・歯槽粘膜・小帯の形態異常を修正して、プラークコントロールが行えるようにする治療方法です。

歯茎・歯槽粘膜・小帯の形態異常により、歯磨きがうまくできないことがあります。

歯磨きが不十分になることで、プラークコントロールができなくなり歯周病に発展するでしょう。

このような状態になると、歯周基本治療もうまくできないため外科手術が必要になります。

歯周基本治療が重要

歯周病治療は、歯周基本治療をしっかりと行うことが重要になります。歯周基本治療を行いながら、症例に応じて必要な処置を行う必要があるためです。

実際に患者さんの年齢・口腔状況によって適切な治療方法が異なります。

歯周基本治療を継続する中で必要あれば抜歯や外科手術が行われるため、まずは歯周基本治療をしっかりと行い、口腔内の状態を把握することから始めましょう。

なお、歯周基本治療とは患者さん自身が普段から行う「セルフケア(歯磨き)」と歯科医院で行う「プロフェッショナルケア」をセットにした治療方法です。

歯周病は歯に歯垢が付着することで起こる症状のため、普段からの歯磨きケアとそれでは落ちない歯垢・歯石の除去を行うプロフェッショナルケアが大切になります。

40代の歯周病で抜歯後の治療方法

腕組みをする医者

40代の歯周病で、抜歯を行ったあとの治療方法は次の3つです。

  • ブリッジ
  • 入れ歯
  • インプラント

歯周病によって抜歯を行うと、悪くなった歯は除去されますが残った歯に影響が出てしまいます。

歯抜け状態で完了せず、何らかの方法で新しい歯を入れるようにしましょう。

ブリッジ

ブリッジは抜歯した歯の両隣の歯を削り、つながった人工の歯を固定する手法です。抜歯が1〜2本で済んだ場合に効果があります。

両隣の2本の歯が土台となり、橋をかけるようなイメージで装着するのが特徴です。被せ物ではなく固定式のため異物感もありません。

ただし「最低でも健康な歯を2本削らなければいけない」・「両隣の健康な歯に力がかかってしまい負担になる」などのデメリットがあります。

また、ブリッジの噛み合わせやメンテナンスを怠ると寿命が短くなるため、治療後のケアも大切になるでしょう。

入れ歯

歯科模型

入れ歯は、抜歯した部分に人工歯を入れて噛めるようにする治療方法です。歯を失った部分だけを補う「部分入れ歯」と、すべての歯を失った場合に入れる「総入れ歯」があります。

部分入れ歯は、残った歯に金属のバネで固定する形式です。マグネットで固定するタイプもあります。

失った部分を補う形のため、元気な歯を削る必要はありません。取り外しが簡単になっており、しっかりと洗えば清潔を保てます。

ただし「ブリッジと比較すると噛む力が弱い」・「装着する場所によってバネが目立つ」などがデメリットです。

また、バネをかける部分に負担がかかるだけではなくバネ部分は細菌が繁殖しやすくなるため、メンテナンスを怠ると再び歯周病の原因となります。

一方で、総入れ歯は顎に直接密着させるのが特徴です。歯槽骨や歯肉は歯がないことにより少しずつ痩せていくため、定期的なサイズ調整は欠かせません。

調整を怠ると「隙間に食べかすが挟まり痛みが出る」・「外れやすくなる」・「発音しにくい」などの不具合が出ます。

部分入れ歯も総入れ歯も取り外しができて清潔に保てますが、その分メンテナンスが重要になるでしょう。

なお入れ歯の費用は保険診療と自由診療があり、保険診療で3割負担の場合は5,000〜15,000円(税込)程度です。自由診療の入れ歯は形によって、様々な種類があります。

インプラント

インプラントとは、人工歯根を顎の骨に直接埋め込む治療方法です。入れ歯やブリッジとは異なり顎骨に直接埋め込むため、自分の歯と同じような感覚を得られます。

上部構造(人工歯)・支台部(アバットメント)・歯根部(インプラント体)の3つのパーツがあり、歯根部にはチタンやチタン合金が使われることが多いです。

見た目や機能面が自分の歯に近く、今までと同じような生活を送れますが、手術が必要・治療期間が長い・費用が高いなどのデメリットがあります。

インプラントは自費診療となり、費用相場は1本につき30万~40万円(税込み)程とされています。参考にしてみてください。

40代の歯周病の治療後に放置するリスク

医師

40代の歯周病の抜歯治療後に放置した場合に考えられるリスクは次の2つです。

  • 残った歯に負担がかかる
  • 噛み合わせが悪くなる

抜歯したあとに放置してしまうと、噛み合わせが悪くなり残った歯に影響が出ます。放置した場合のリスクを把握して、適切な治療を継続しましょう。

残った歯に負担がかかる

抜歯のあとに放置してしまうと、残った歯に負担がかかってしまいます。歯には想像以上の力がかかっているからです。

歯は、噛み砕いたりすり潰したりして食べ物を細かくしています。さらに、何回も噛むため歯にかかる負担は相当なものです。

上下28本の歯があるため「1本くらいなくても大丈夫」と思いがちですが、わずか1本失うだけでは全体のバランスが崩れて他の歯に大きな負荷がかかります。

噛み合わせが悪くなる

歯を見せる女性

抜いた歯の後方の歯は、手前側に倒れていくことが多いです。

1つでも歯が欠けると、その部分だけではなく全体のバランスが崩れてしまうので注意しましょう。

歯科医師と相談しながら自分に合った歯周病治療を

カウンセリング

40代の歯周病には、歯科医師と相談しながら自分に合った歯周病治療を行うことが大切になります。歯周病は重症化すると、外科手術や抜歯のリスクがあるためです。

できるだけリスクを回避するためには、普段から歯科医院と連携を図り、その時点で適切な治療を進めていくことが重要です。

歯周病が気になり出したら、歯周病専門の歯科医師に相談して自分に合った適切な治療を受けましょう。

まとめ

診察する医師

40代で歯周病にかかった際の抜歯の必要性や抜歯以外の治療方法・抜歯後の治療について解説しました。

40代で歯周病になるケースは多く、症状が悪化すると抜歯を選択することも少なくありません。

歯科医院では基本的に抜歯をしない治療方法を優先しますが、他の歯に影響が出る場合や、残すことでさらに症状が悪化する場合は抜歯を行います。

抜歯をした後は悪い歯がなくなったからといって安心せず、新しい歯を補う治療を行いましょう。

歯を失ったままだと、他の歯に負担がかかったり噛み合わせが悪くなったりします。適切な治療を受け、その後のメンテナンスを怠らないことが大切です。

参考文献

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