一般的に歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で知られていますが、進行すると歯周ポケットが深くなってしまい歯槽骨が溶けてしまいます。
歯周病は進行程度により、軽度・中等度・重度と分かれ、治療方法もそれぞれ異なります。軽度はセルフケアを徹底すれば改善できるレベルですが、中等度以上になると歯科医院での治療や専門的なケアが必要です。
重度の歯周病になると外科手術を伴う治療が必要です。
歯周病の気になる治療費・治療の種類・費用相場を、この記事では詳しく解説していきます。
ひどい歯周病の治療費用は?
歯周病が重度になってしまうと治療費が気になりますが、治療方法によってかかる費用は異なります。治療の種類に応じてどのような違いがあるのでしょうか。
一般的に、早期の歯周病の場合は治療が比較的簡単で費用も抑えられますが、それに対して進行した重度の歯周病は、治療が複雑化し費用が高くなるのです。
重度の症状の場合は、外科的な手術を必要とする場合も多く、歯周組織の再生手術など高度な治療が必要となる場合があります。
地域や医療機関によって治療費用の差が出ることもありますので、歯周病の治療費用については、治療を受ける歯科医院に事前に確認しましょう。
歯周病の治療の種類
歯周病の治療の種類は、症状によって異なりますが、重度の場合の治療方法を下記に記載します。
- 歯磨き指導
- スケーリング(目に見えるところの歯の表面についている歯石を除去する)
- スケーリング・ルートプレーニング(歯茎の中の歯根の表面に付いた歯石を除去する)
- フラップ手術
- 歯周組織再生治療
上記の治療方法に関して、ここでは詳しく解説していきます。
歯磨き指導
歯周病の治療として、歯磨きの方法が重要です。そもそも歯ブラシの毛先が歯磨きの時に、歯垢にあたっていなければ歯垢の除去はできません。
自分では、磨いているつもりでも磨けていない人がほとんどなのを覚えておきましょう。磨きたい場所に毛先がきちんと当たっているか確認して下さい。
ポイントは下記になります。
- 歯と歯の間:歯垢が残りやすい、毛先が当たりにくい
- 歯と歯肉の境目:歯垢が残りやすい、毛先が当たりにくい
- 奥歯どうしの境目:歯垢が残りやすい、毛先が当たりにくい
上記の部分は、磨き残しができやすい場所なので自己流に頼らず、歯科医院で適切な指導を受けて下さい。
磨き方のポイントは、歯ブラシが確実に毛先に届いているか鏡を見ながら確認して下さい。
力を入れすぎると毛先が開き歯垢が落とせないので、細かく動かしながら毛束がまっすぐなまま歯の表面に当たる程度の力で磨きます。
1ヶ所につき10〜20回位磨くのが理想的です。1日に最低5分以上かけて歯垢を取り除くようにしましょう。
毎食後磨くのが理想ですが、寝る前にはとくに丁寧に歯磨きして下さい。
スケーリング
歯周病治療で多く用いられるスケーリングとは、どのような治療方法なのでしょうか。
スケーリングとは、専用の器具を使用して、歯垢を除去する方法です。スケーリングを行うには、スケーラーという専用の器具を用います。
スケーラーには、超音波スケーラーと手用スケーラーの二種類があります。超音波スケーラーは、先端が超音波によって微振動を起こし、歯石を粉々に分解するのです。
手用スケーラーは、手動で歯石を丁寧に取り除く時に使用します。歯科衛生士が熟練した技術で対応してくれます。
スケーリング・ルートプレーニング
ルートプレーニングとはスケーリングの終了後に、歯根表面のセメント質や象牙質を除去する方法です。歯根面を硬くなめらかに仕上げられ、むし歯・歯周炎の予防につながります。
ルートとは、歯根部分のことをいい、プレーニングは平らにすることを意味しています。
スケーリングとセットで行われることが多く、歯の表面をつるつるにしてくれるので、汚れの付着が起こりにくくなるのです。
通常のスケーリングだけでは治らない歯周病や口臭の改善にも役立つといわれています。
フラップ手術
フラップ手術とは、歯周病治療で治りきらなかった部分を治療する手術になります。歯周ポケットの歯石はスケーリングでは67%程度までしか除去できません。
残ってしまった歯石を、歯肉を切開して除去する方法をフラップ手術といい、処置が可能であるか診断した上で実施されます。
手術は局部麻酔をしますので痛みを感じることはほとんどありません。専用の器具を使用して歯石をきれいに取り除いていき、歯の表面を滑らかにします。
フラップ手術によって、隠れていた歯石や細菌を取り除けるため、歯周ポケットの状態を改善できます。悪化した口内環境をリセットしてくれるのです。
歯周組織再生治療
歯周組織再生療法は、歯周病によって失われた歯周組織を再生させる目的で行われる治療方法です。
手術前に精密な症状診断を実施し、歯周基本治療によって改善できなかった病変に再生療法が必要か判断します。
診断方法としては、従来のデンタルエックス線写真に加えて、歯科用CTスキャンで撮影します。
口腔内をより立体的に見せる3DCTスキャンを導入している歯科医院が多く、口腔内の状態を把握することが可能です。
どこに治療が必要か手術方法などをシミュレーションできるため有効な設備です。
口腔衛生状態が不良な場合や喫煙によって、歯周組織の創傷治癒が遅延します。その結果、手術の成功率が低下してしまうのです。
手術は歯肉を切開し行われ、歯垢や歯石などを除去し骨が溶けてしまっている部分に歯周組織再生材料を適用して、縫い合わせ終了です。
手術時間は、1時間半〜2時間程度で終了します。抜糸は、通常手術から2週間後に実施され経過を観察していきます。
ただし、歯周組織再生治療はすべての症例に適応できるわけではありません。まずは治療を受けられるかについての説明を受けるようにしましょう。
歯周病の進行段階による費用相場は?
歯周病の進行段階による費用相場は、どのくらいになるのか気になるところです。
歯周病の症状は、下記のように分かれています。
- 歯肉炎の場合
- 軽度歯周炎の場合
- 中度歯周炎の場合
- 重度歯周炎の場合
症状によりかかる費用は異なりますので、ここでは詳しく解説していきます。
歯肉炎の場合
歯肉炎の症状としては、歯茎が赤く腫れあがり、硬いものを食べた時や歯磨きで出血します。この段階であれば、歯磨きの指導や歯垢・歯石のクリーニングで症状は治まります。
気になる費用ですが、歯石の除去費用は保険が適用できる場合とできない場合があるのです。
保険適用が可能なケースは、歯科医院で歯周病と診断された場合です。保険診療での費用は、検査代を含めて3,000〜4,000円(税込)程度が相場といわれています。
その他に、歯のクリーニングを行う費用は自費扱いになります。
できてしまった歯石は、歯磨きでは取り除けないため、専用の器具によって歯科医院で取り除いてもらいましょう。
軽度歯周炎の場合
軽度歯周炎の場合は、歯肉のみの症状に止まらず、歯を支える骨にまで炎症が起きてしまった状態です。
赤く腫れた歯茎からの出血と、骨が溶けてしまうことで歯と歯茎の境目の歯周ポケットが深くなります。
軽度歯周病の治療は、歯肉炎と同じく歯科医院で歯周病と診断を受ければ保険診療で対応できます。
費用の相場は、歯肉炎治療と同じく3,000〜4,000円(税込)程度で治療が可能です。
中度歯周炎の場合
中等度歯周炎になると、症状が顕著にあらわれます。歯周ポケット内にある歯周病菌が増殖して骨が更に溶けてしまい歯がグラつくようになります。
歯茎が萎縮するため、歯が長くなったような見た目になり、歯と歯の間に隙間ができるのです。
このような症状に発展すると、歯周基本治療・歯周外科治療の他に歯周組織再生療法を行う場合があるのです。
費用としては、保険診療と自由診療の組み合わせが必要で、歯周外科治療費や仮歯費用など症状に応じて算出します。
軽度歯周炎の費用相場は、保険適用で5,000〜10,000円(税込)程度かかり、自由診療の場合は10,000〜50,000円(税込)程度が目安とされています。
重度歯周炎の場合
重度歯周炎まで症状が進行すると、歯周ポケットがさらに深くなってしまい歯がグラついて歯茎に膿がでます。
歯周ポケットの深さは、6mm以上に広がるので、症状によっては隣接している歯の影響を考えて抜歯して対処することもあるのです。
重度歯周炎の費用相場は、保険適用で30,000〜100,000円(税込)程度かかり、自由診療の場合は200,000円(税込)程度が目安とされています。
重度歯周炎での主な症状は下記になります。
- 口の中がネバネバする
- 歯茎から膿が出てくる
- 歯がグラグラする
- 歯茎が下がり、歯が長くみえる
- 口臭が強くなる
上記の症状が一つでも当てはまる人は、歯科医院にて診断を受けるようにしましょう。
歯周病の自由診療と保険診療の違いは?
歯周病の自由診療と保険診療の違いにはどのようなことがあるのでしょうか。
保険診療と自由診療の特徴は下記になります。
- 保険診療には制約がある
- 自由診療は行える検査や治療が幅広い
それぞれの特徴について、ここでは詳しく解説していきます。
保険診療には制約がある
保険診療では、1回の治療内容・治療部位が限定され、少しずつしか治療を進められません。
そのため、治療期間が長期になるため、通院回数も増えてしまいます。
薬剤に至っても、その種類・使用法が健康保険で厳密に定められているので、国際的に推奨されている薬剤であっても使用できない場合があるのです。
規定に沿った診療を行わないと保険診療は適用されないため、患者さんがより良い治療方法を求める場合は自由診療による治療が必要となります。
歯科治療は、毎年最新の治療方法が確立されていますが、その治療方法の多くは健康保険診療が不可能なケースがほとんどです。
日本で歯周病の患者さんに有効で有益な治療方法を提供するためには、選択肢が限られている現状なのです。
自由診療は行える検査や治療が幅広い
自由診療で行える検査や治療が幅広い理由は、保険診療の規定ではできない最新の治療や質の高い治療を制限なくできるからです。
そのため、保険診療は3割負担で治療できますが自由診療は全額自己負担になります。
例えば、歯型をとるときに使う粘土のような素材も自由診療ではシリコンを使用するため、変形が少なく崩れにくいので制度の高い被せ物の製作が可能です。
自由診療では長期的に保てる材料を選択でき、症状に合わせた治療時間の設定が可能となります。
見た目も考慮した治療方法など、さまざまな選択肢を持つことが可能となるのです。
保険診療の場合の費用相場は?
歯周病治療で、保険診療の場合の費用相場はどのくらいなのでしょうか。
歯周病治療は、症状の状態によって治療方法が異なります。保険治療も可能ですが歯科医院での診断によって保険を適用できるか確定します。
適用ルールも厳格で、治療方法にも規定があるので、自由に治療方法を選択できないのです。
保険診療の場合の費用相場は、症状に応じて治療期間や金額に差があります。一般的には3ヶ月〜1年で10,000〜50,000円(税込)程度といわれています。
保険診療の場合は、1日で治療する範囲が決まっているため、通院の回数は増えますが自由診療に比べると費用を抑えられるのです。
費用の支払いが厳しい場合はどうすればいい?
治療費用を支払うのが厳しい場合はどうしたら良いでしょうか。
複数の支払い方法を、下記に記載します。
- 分割払い
- クレジットカード払い
- デンタルローン
上記の支払い方法について、ここでは詳しく解説します。
分割払い
歯科治療の費用が高額になり一括での支払いが困難な時は、歯科医院独自で分割払いを取り扱っている場合があります。
歯科医院毎のオリジナルプランを提供しているため、回数に関しては異なりますが金利を取らないのが一般的といわれています。
分割回数は、3〜24回がほとんどですが、月々の支払は1万円(税込)以上になりますので月に払える範囲が1万円(税込)以下の場合は、他の支払い方法を検討しましょう。
歯科医院の支払い方法に関しては、通院している歯科医院に事前に確認しておく必要があります。
クレジットカード払い
歯科医療費の支払いに、ほとんどの歯科医院がクレジットカード払いを取り扱っています。
キャッシュレス時代になり、現金を持ち歩かない人が増えていますので、通常の買い物含めてクレジット払いを選択する人は非常に多いです。
クレジットカードでの支払いは、一括払い・分割払いを選べますので、支払い能力に合わせて選択できます。
クレジットカードは、月の利用額が定められていますので、治療費用を確認のうえ自分にあった支払い方法を決めましょう。
デンタルローン
歯科医院では、自由診療の治療が高額になるため、各種デンタルローンを取り扱っています。一般的なローンよりも金利や手数料が低く設定されています。
ローン会社によって金利・手数料は異なり、年利3〜5%が一般的です。ただし、歯科医院によってはデンタルローンを導入していない場合もありますので事前に歯科医院に確認しておきましょう。
デンタルローンを利用するには、ローン会社が信用調査をしますので、結果によっては利用不可になることもありますのでご注意下さい。
まとめ
歯周病に関して解説してきましたが、ひどい歯周病になったらどのくらい治療費用がかかるのか。治療の種類・費用相場についてご理解いただけましたでしょうか。
どのような病気でも、重症になれば治療費用は高くなるものです。特に歯科治療のように保険適用と自由診療の費用の差が大きい場合は、悩むのではないでしょうか。
保険診療と自由診療は、お互いにメリット・デメリットがありますので、自分にあった治療方法を選びましょう。
歯周病は、気をつけていても磨き残しなどで、いつの間にか症状が進行してしまう場合があります。
歯磨きが行き届かない場所に細菌は貯まりやすいので、定期健診が非常に重要となるのです。
歯科医院では、3ヶ月に一度の定期健診を推奨していますが、歯の健康が全身に及ぼす影響が大きいからなのです。
いつまでも健康な自分の歯を保つためにも、普段から歯のケアを心掛けましょう。
参考文献