歯周病の手術はどのようなことをするのか気になっていませんか。
歯の治療は、痛くて怖いイメージがあって不安に感じる方も多いかもしれません。
また、歯周病の治療となると、痛みの症状がないにも関わらず、治療で切開などが必要となることに疑問に感じるかもしれません。
しかし、歯周病の手術の主な目的は、原因因子や歯周病変部の除去、歯周組織の生理的な形態回復、審美性の改善です。それを実現することで歯磨きをしやすい口腔環境を作り、歯周病を再発させないようにするものです。
歯周病の症状が悪化し、痛みが出てしまう前に対処することによって、簡単な治療で改善させることができます。
この記事では、そのような歯周病の手術の種類・手術の流れ・手術後の注意点・手術費用・保険適用についてもご紹介します。
もし、歯周病の手術で気になることがあれば、お近くの医療機関にご相談ください。
歯周病の手術の種類
歯周病の手術と聞くと、大変そうなイメージがありますが、比較的簡単に行えるものもあります。
しかし、治療によっては術後に知覚過敏の症状が出てしまったり、手術後の痛みや出血が気になったりする場合もあるのです。
この章で紹介する主な歯周病の手術は以下の6つになります。
- フラップ手術
- 歯周ポケット掻爬術
- 歯茎切除術
- 歯茎弁根尖側移動術
- 歯周組織再生療法
- 歯周形成手術
この章では、これら6つの手術の具体的な方法・メリット・デメリットを紹介します。
症状によって同じ名称でも医療機関によって方法が異なる場合もあるので、参考程度にご覧ください。
歯周病の治療で行われるフラップ手術とは、歯茎にメスを入れてより深い歯周ポケットに付着した歯石や病変部を除去する方法です。
フラップ手術のメリットとしては、明視野での手術により確実に歯石や病変部の除去ができることが挙げられます。
しかし、デメリットとして歯茎を切開しているので、処置後に歯肉退縮による知覚過敏の症状が出ることがあります。
手術当日から一週間後に抜糸、その後定期的に状態を確認し3ヶ月後に再評価を行う場合が多いです。
手術後の当日は、飲酒や激しい運動などの血行の良くなる行動を避けなくてはならないですが、翌日からは通常通り行えます。
このことからも、フラップ手術の身体にかかる負担は少なく、手術後の痛みも数日で引く場合がほとんどです。
歯周ポケット掻爬術とは、歯周ポケットに器具を入れて歯根表面の歯石や感染部位を除去し歯根に触れる歯茎の内面の炎症部位を掻爬する処置です。
フラップ手術との違いは、歯茎にメスを入れない点にあります。歯周ポケット掻爬術はあくまで歯石の除去と炎症部位の掻爬を行うものなのです。
歯周ポケット掻爬術は、歯周ポケットが4mm程度と、軽度の歯周炎に用いられる方法になります。
歯周ポケット掻爬術だけでは症状の改善が見込めない場合は、フラップ手術を行って、炎症を取り除きながらより深くまでアプローチします。
歯肉切除術は歯周病や服用薬剤の影響などによって、増殖してしまった歯茎を切除して、歯周ポケットを浅くする手術です。
このように、歯茎の形を整えることによって歯周病の改善と再発予防が期待できます。
歯肉切除術のメリットは、歯周ポケットが浅くなりプラークや歯石が溜まりにくくなることが挙げられます。
デメリットは、他の治療方法に比べて傷口となる部分が大きくなることがあります。もちろん傷口を保護する材料も使用するので心配はありません。
歯茎弁根尖側移動術とは、歯周ポケットが深くなってしまった歯に行う治療です。また、付着歯茎をできるだけ失いたくない場合にも用いられる方法になります。
歯肉弁根尖側移動術とは、歯周ポケットが深くなってしまった歯に行う治療です。また、付着歯肉をできるだけ失いたくない場合にも用いられる方法になります。
歯肉弁根尖側移動術のメリットとしては、歯周ポケットを浅くできるのでプラークコントロールのしやすい形になることと、深い部分の歯石の除去が行えることが挙げられます。
デメリットとしては、術前と比較して歯茎が下がった位置に位置付けられることから、歯が長く見えてしまったり、知覚過敏の症状が出やすくなることがあります。
このような歯肉弁根尖側移動術ですが、一度処置してしまえば、再び歯周ポケットが深くなる可能性は低くなります。
歯周組織再生療法とは、歯周病によって破壊された骨などの歯周組織を再生させる治療法です。
具体的な方法は、歯茎や骨の炎症がある部分を取り除き、その中に組織の再生を誘導する薬を入れて歯茎が入り込まないように覆います。
このような骨を再生させるための薬剤には、日本発世界初の再生医薬品であるFGF-2製剤が使われることが多いです。
また、身体の他の部位や動物などから取った骨を骨欠損部に補填剤として使用するといった方法もあります。
こうすることによって、組織の再生を促し、骨の回復と歯茎を理想的な形に整えることができるのです。
しかし、デメリットとして、手術時間がわずかにではありますが長くなることが挙げられます。
歯周形成手術とは、歯茎や歯の形を整えることによって、審美回復とメンテナンスしやすい形態にする手術になります。
例えば、磨きにくさの原因となっている口腔前庭の深さの調整や、痛みの原因となる歯槽粘膜の露出を無くすことなどが歯周形成手術といわれるものです。
メスを入れる部位は目的によって様々ですが、形態異常を修正し、歯磨きしやすいお口の状態にすることは共通しています。
歯周形成手術のメリットは、歯の見た目も良くなり、歯磨きもしやすくなることです。
しかし、デメリットとしては、手術後に出血や痛みが出やすくなる場合があります。また、高度な技術が必要になる場合があるので、病院選びが重要になります。
歯周病の手術の流れ
歯周病の手術の流れは、手術の方法によって異なります。
しかし、すべての手術に共通しているのは術前の徹底したプラクコントロールと、術後は安静を心がけることです。
前述で紹介したフラップ手術の場合は、初めに歯茎に局所麻酔を打ち、メスで歯茎を切開します。
次に、歯茎を歯根と歯槽骨から剥がして、歯周病変部や歯石を取り除いて縫い合わせます。
このような術後1週間ほどで抜糸を行い、治療後は歯周ポケットが浅くなり、プラークが蓄積しにくくなるのです。
フラップ手術だけでは不十分と判断された場合は、歯周組織再生療法や歯周形成手術を併用する場合もあります。
手術の流れで気になることがあれば、医療機関にご相談ください。
歯周病の手術後の注意点
歯周病の手術後は痛みや麻酔の影響で少なからず生じます。
また、手術後の回復を早めるためにも、刺激になるものを避けて安静にする必要があるのです。
このような歯周病の手術後に気をつけることは下記の5点になります。
- アルコールを避ける
- 激しい運動を控える
- 強くブラッシングをしない
- 食事の際は手術した部位を気を付ける
- 尖った食べ物は避ける
これらの5点の注意事項について、その理由やポイントについてお伝えするので参考にしてください。
歯周病の手術後は、アルコールを控えましょう。その理由は下記の2点になります。
- 細菌感染しやすくなる
- 出血傾向が強くなる
手術後にアルコールを摂取してしまうと、免疫力が落ちて細菌感染が起こりやすくなります。
また、傷口炎症や出血が激しくなったり、傷の治りを悪くしたりすることもあります。
さらに、痛みが引いたからといって飲酒をしてしまうと、痛みが増してしまう場合もあるのです。
つまり、手術後の回復を早めるためにも、医師の許可が出るまでは必ず飲酒を控えましょう。
そして、飲み始める際も一気に多くの量を飲むのではなく、身体を慣らしながら少量ずつ飲み始めることをおすすめします。
歯周病の手術後は激しい運動は控えましょう。
手術後は歯の痛みや麻酔の影響で、気分が悪くなったり手術後の傷の痛みが激しくなったりする場合があります。
また、転倒などによる衝撃で傷口にダメージが加わり、再び処置が必要になる場合もあります。
このように、歯周病の手術直後の激しい運動は、様々なリスクがあるのです。
そのため手術後の傷の治りを良くするためにも、手術後は激しい運動を避け、普段どおりの生活を心がけましょう。
歯周病の手術後に手術部位を激しくブラッシングすることは避けましょう。
強くブラッシングしてしまうと、縫った部分が解れたり、傷の治りが悪くなったりする場合があります。
しかし、お口の衛生状態を保つためにも、磨けるところは丁寧に磨く必要があります。
そのため、手術直後は術部のみ洗口材を用いて洗口し、2〜3日経過してから超軟毛のブラシを用いて、なるべく優しく磨くようにしましょう。
このように、手術後は傷の治りを良くしつつ清潔な状態を保つために、優しいブラッシングと口をゆすぐことを忘れずに行いましょう。
歯周病の手術後は手術部位での食事に注意するようにしましょう。
処置をした方で積極的に使うと、傷の治りが悪くなったり、食べ物が挟まってしまったりしてしまいます。
食事の制限は特別ありませんが、必要に応じてはお粥などの軟食を用いるのも良いでしょう。
このように、歯周病の手術後は食べ物や食べ方を工夫する必要があります。
歯周病の手術後は、尖ったもの・固いもの・粘着性のものを食べるのは避けましょう。
例えば、キャラメル・チョコレート・固いせんべいなどは歯に負担がかかってしまうので、傷が良くなってから食べるようにしましょう。
手術後におすすめの食べ物は、柔らかいもの・粘着質でないもの・冷たすぎないもの・熱すぎないものです。
また、香辛料やスパイスの使用は、傷口への刺激を減らすために控えるのをおすすめします。
このように、歯周病の手術後は食べ物の硬さや温度による刺激を減らすために、工夫する必要があります。
歯周病の手術費用
歯周病の手術費用は手術方法によって大きく異なります。フラップ手術の場合、歯1本あたり7000円が相場といわれています。
フラップ手術を行った際に、保険適応の再生療法を行った場合は、一部位あたり20,000〜25,000円が上乗せされます。
保険適用となる治療法では、患者が負担する金額はこれらの金額の3割です。
もし治療で保険適応外の再生材料を使用したり、高度な治療が必要になった場合は、保険適用外になるため10万円を超えるものもあります。
このように、保険適用の治療と保険適用外の治療では費用に大きな差があります。
歯周病の手術は保険適用できる?
歯周病の手術は保険適用できるものもあれば、できないものもあります。
基本的にメスを入れるか、入れないかに関わらず、歯石や歯垢を取り除く治療は保険適用になります。
しかし、この保険適用の治療には限界があり、歯石除去の回数・使用できる薬・一定期間の再治療などの制限があるのです。
この制限を超えて治療を行う場合や、再生材料の使用や高度な手術の場合は保険適用外となり、多額の費用がかかるのです。
このように、保険適用の治療には制限があるため、高い安いだけで治療方法を決めるのではなく、ご自身の症状に合わせた治療を選択できるようにしましょう。
まとめ
ここまで、歯周病の手術・手術の流れ・手術後の注意点・手術費用・保険適用できるかなどを解説しました。
前述でご紹介した主な6つの歯周病の手術は、患者の歯の状態によって選択されています。
手術の流れも、手術方法によって大きく異なります。しかし、共通しているのは術前の徹底したプラクコントロールと、術後は安静を心がけることです。
また、歯周病の手術は多くの場合保険適用になりますが、回数や方法などが保険適用の制限を超えた治療や保険適応外の再生材料の使用、高度な手術の場合は保険適用外になってしまうので注意が必要です。
もし、歯周病の手術で気になることがありましたら、信頼できる医療機関にご相談ください。
参考文献