歯周病の治療の際に使用するレーザー治療とは、レーザーのパワーによって高速に水を出し、歯茎や歯・骨を削り治療を行っていく最先端技術です。
治療時間や治療後の治りも比較的早いため、多くの方に求められている治療方法といえるでしょう。
しかし、レーザー治療の種類はさまざまあり、さらにはレーザー治療の普及も広がっていない状態で、どのようにして歯科医院を選べばいいか迷ってしまいます。
そこで今回は、歯周病のレーザー治療について解説いたします。
種類・メリット・デメリット・相場費用など詳しく解説するため、より安心して治療が受けられる歯科医院を選ぶことが可能です。
レーザー治療は、従来の治療では考えられなかった驚くべき作用も発揮します。歯周病治療の際には、ぜひ参考にしてみてください。
歯周病のレーザー治療とは?
歯周病の治療のために使用されるレーザー治療とは、レーザーのパワーによって水が気化するときの微小爆発を利用した治療方法です。
通常の治療ではメスを使用しており、その際に出血が多いのと縫合する工程が必要なのが特徴でした。
しかしレーザー治療は出血も少なく、切開と同時に止血や殺菌、鎮痛から消炎まで機能を発揮してくれるため、従来の治療方法より不快に感じません。
メスを使用せずに、歯茎や歯・骨の処置ができるので治療時間も非常に短く、治療後も比較的早く治ります。
痛みもほとんどなく、細胞や組織への侵襲が小さく治療が行えるので、治療が苦手という方も安心して通い続けられるでしょう。
しかし、治療後に輪ゴムで弾く程度の痛みが生じる場合もあるので、我慢できないほどの痛みの場合は医師に相談してみましょう。
歯周病治療で使われるレーザーの種類
歯周病治療で使われるレーザーの種類はさまざまあり「炭酸ガスレーザー」・「YAGレーザー」・「半導体レーザー」の3つの治療方法を解説していきます。
それぞれ特徴が異なるので、自分に合う治療方法を把握して対応している歯科医院を探してみましょう。
炭酸ガスレーザーは歯茎などの軟組織のみに反応します。そのため、歯根の奥のほうまで影響を与える心配の少ないレーザーです。
照射した際、深部へ過剰な温度変化を与えることがないため、歯茎下にある骨が熱によって壊死する心配もありません。
さらに炭酸レーザーには、異物や腫瘍を取り除くHigh level laser therapy (HLLT) 作用と組織の再生Low level laser therapy (LLLT) 作用があり、メスで治療するより傷の治りが早くなるでしょう。
そのため、歯周病の影響によって引き起こされた歯茎の炎症にも効果的です。
炭酸ガスレーザーのHLLT作用によって殺菌から炎症組織の除去まで行い、LLLT作用によって歯茎を修復してくれます。
同時に細胞外情報伝達因子に信号が送られ、治癒能力が向上して急速に傷を治してくれます。
YAGレーザーとは別名「エルビウムヤグレーザー」とも呼ばれており、最も体に優しいといわれている治療方法です。
つい気にしてしまう不快な音や振動も比較的感じられず、麻酔も不要の場合が多いのが理由でしょう。
安全性はもちろん、患者にとって負担とならない治療方法を目指し、導入する歯科医院も増えました。
YAGレーザーの特徴は、レーザーによって照射すると組織表面の水分に反応して蒸発し、発熱を最小限に抑えられるところです。
さらに、患部を冷やしながらの治療や、照射範囲が狭いことから安全性も高く、痛みも少ないとされています。
そのため歯の内部で熱変性が起こり、表面が黒く変色する恐れもほぼないので、体へかかる負担は非常に少ないといえるでしょう。
またYAGレーザーは、水への吸収性が高く、軟組織だけでなく歯や骨・歯石などの硬組織の治療にも使用できます。
歯周病をはじめ虫歯や根管治療などにも有効で、治癒能力を引き出す力や歯肉の切開でもレーザーを使用しているため短期間で傷が治るのが特徴です。
半導体レーザーは、組織への浸透性が高いレーザーで「光線力学療法(PDT治療)」にも使用されている治療方法です。
「光線力学療法(PDT療法)」とは、歯周病菌を死滅させるレーザー治療ともいわれている歯周病治療方法です。
非熱の半導体レーザーを照射し、活性酸素を大量に発生させる化学反応を起こすことで、歯周病の原因菌のみを死滅させる効果が得られます。
従来では高熱を照射する治療方法が用いられてきましたが、半導体レーザーの最先端の技術によって体に負担のかからない治療方法といえるでしょう。
さらに色素に吸収されやすいのも特徴で、歯茎の切開や止血・凝固などにも期待できるため早く治る治療方法となっています。
歯周病のレーザー治療のメリット
歯周病のレーザー治療にはメリットがいくつかあり「痛みが少ない」・「出血がない」・「歯周ポケットの奥まで届く」・「殺菌作用がある」などがあります。
それぞれのメリットを詳しく解説していくので、治療を考えている方はしっかりと把握をして治療の参考にしてみてください。
歯周病に対するレーザー治療のメリットとして、第一に挙げられるのが体への負担を抑えてくれるなど「痛みの少なさ」です。
レーザー治療は痛いように感じると思われがちですが、実はほぼ痛みを感じません。さらには、出血までも抑えてくれます。
痛みに敏感な方だと時折輪ゴムで弾かれたかのようなピリッとした感覚はありますが、従来の治療方法に比べても痛みはさほど感じないでしょう。
また、治療後に仕事や食事を制限されることもないので、治療後すぐに普段の生活に戻せます。
歯周病に有効なレーザー治療のメリットには、出血が少ないことも挙げられます。
メスを使用する治療方法は局所麻酔の後に切開を行うため出血が多く、縫合する必要がありました。
しかし、レーザー治療は切開と同時に止血し、さらに殺菌や凝固までしてくれるので出血が少ないまま治療が終了します。
虫歯や歯周病などに関係のない歯には反応しないため、健康な歯を傷つけることなく治療できるため安心です。
レーザー治療のメリットとして、歯周ポケットの奥まで届くことも挙げられます。
従来の基本的な歯周病治療のみだと術者の技術に依存し、歯石を取り残すことで歯周炎再発の危険性があります。さらに、歯の表面に侵食した細菌も薬剤のみで取り除くのは困難です。
しかしレーザーの光や熱は、他の器具では届かなかった歯周ポケットの深い部位や複雑な部位にまで殺菌除去などの効果を発揮できます。
そのため、歯茎を切開しなくても歯周ポケットの奥まで治療することが可能です。
歯周病に効くレーザー治療は殺菌作用に大変期待ができ、消毒によって歯周病から分泌される毒素(内毒素)の除去も行ってくれます。
さらに殺菌作用によって鎮痛や消炎も期待できるため、必然的に治療期間も短く済むのもメリットです。
傷の治りを早くしてくれる作用があり、消炎剤や抗生物質の投与も極力抑えられるため妊娠している方でも安心といえるでしょう。
また、歯茎の内側にもアプローチをかけ、肉芽の蒸散や膿の排出も促進させる効果にも期待できます。
その他、従来の歯根治療よりも虫歯や歯周病にならないように予防もしてくれるので、再発を防ぐことも可能になりました。
歯周病のレーザー治療のデメリット
歯周病のレーザー治療のデメリットは「どこでも受けられるわけではない」・「重度の歯周病は治療できない」・「副作用が起こる可能性がある」などがあります。
事前にデメリットを知っておくことで治療の際に焦らず受けることが可能です。なかには、受けられないケースもあるのでしっかり把握しておきましょう。
歯周病の治療の際にレーザーを使用したい場合、どこの歯科医院でも対応してくれる訳ではありません。
最新技術のため未だに全国に普及が進んでおらず、レーザー治療導入率は30%ほどといわれています。
そのため、レーザー治療を受けられる歯科医院を事前に調べる必要があり、希望する歯科医院には直接問い合わせをしてみましょう。
厚生労働省が認めた専門医が在籍しており、説明がわかりやすく衛生管理がしっかり行われているかが重要になります。
また直接連絡をしなくても、ホームページなどで診療方針や在籍する医師の経歴・設備写真などの確認も可能です。
重度の歯周病は、歯周ポケットに照射してアプローチをかけるだけでは治療が行えないことが多いため注意しましょう。
レーザー治療には奥へ入り込める限度があり、歯根の分岐部など入り組んだ部分にまでレーザーが到達・除菌を行えないのが理由です。
重度の歯周病の治療を行いたい場合はレーザーで歯茎を切開し、歯茎の奥深くにあるプラークや歯石・根面を綺麗に除去する必要があります。
また、重度の歯周病だけでなく「クロルへキシンアレルギー」や「無カタラーゼ症」を発症している方も受けることができません。
レーザー治療を受けた際に、痙攣や意識障害・口内が荒れるなどの症状が現れる恐れがあります。事前に確認しましょう。
レーザー治療は比較的安全で、副作用が起きにくいといわれている治療方法ですが、知覚神経麻痺の恐れがあるので注意しておきましょう。
知覚神経麻痺とは、熱により下顎にある下歯槽神経などに刺激が伝わり、顔面の皮膚や口腔粘膜、さらには人間の五感にまで起きる麻痺のことです。
万が一、知覚神経麻痺が起きてしまっても、薬物療法や星状神経ロックなどの治療を受けられるため、心配な方は医師と相談しましょう。
また、もともと虫歯が進行しており強い痛みがある場合も、レーザー治療はおすすめできません。
レーザー治療は治療費が保険適用外の場合が多く、高額で支払わなければならないケースもあります。
保険適用は治療方法や素材に指定があるため、保険適用となる治療方法が限られるからです。
なかには保険適用の場合もありますが、基本的に「歯周病レーザー治療」や「歯周再生治療」は保険適用外となります。
「より美しく」や「不快感を取り除く」など、行った治療は付加価値を伴う治療方法になり保険適用外となるので気をつけましょう。
さらに、メンテナンスや予防などでの利用の「PMTC」や「エアフロー」も保険が適用されません。
その他にも、すでにインプラントの治療を行っている方は、厚生労働省の指導のもと歯周病治療の際に保険が適用されないこととなっています。
治療を行う前に、保険適用になるのかを確認した上で歯科医師と相談しましょう。
歯周病のレーザー治療にかかる費用
歯周病をレーザーによって治療した場合、条件を満たしていると保険適用となるケースもあります。しかし、自由診療は高額な治療費となることが多いです。
軽度の症状といっても歯肉炎よりも症状が重くなるため、2回以上の通院が必要でしょう。
そのため、トータル3〜7万円程度の治療費がかかり、別途検査費用もかかります。
また、中度の症状では歯や歯茎を支える骨にまで影響が出ているため、ぐらつきが気になり炎症が進んでいる状態です。
中度の症状でレーザー治療を行う際は、トータル14〜16万円程度かかると覚えておきましょう。
さらに重度の症状の場合、歯を支えられなくなり安定感もない状態になるため1回のレーザー治療も高額になります。
治療回数も6回以上となり、22〜33万円と高額です。経済的にも厳しくなるため、できるだけ早期の治療を心がけましょう。
まとめ
歯周病治療の際に用いられるレーザー治療は高速にレーザーを出し、歯や歯茎・骨を削って治療を進める最先端技術です。
レーザー治療には炭酸ガスレーザー・YAGレーザー・半導体レーザーの3つの治療方法があり、どれも特徴が異なります。
また、従来の歯周病治療よりも出血も少なく痛みも最小限に抑えられるため、麻酔が不要な点も特徴のひとつです。
治療と同時に消毒も行ってくれるので治りが早く、歯周病や虫歯の再発も抑えることができるため安心して受けられる治療方法でしょう。
しかし、高度な技術を伴う最先端医療のため、全国的に普及率が低くレーザー治療を行ってくれる歯科医院を探す必要があります。
さらに保険適用外になるケースも多いので、適用されるかなどを事前に確認してから治療を受けるようにしましょう。
症状の状態によっては高額になったり、受けられない場合もあります。
歯周病をレーザーで治療するメリットが多いため、この記事を参考にして治療してくれる歯科医院を探してみてください。
参考文献